プリンターはなんと言っているんだ2011
2011年 12月 26日
年賀状といえば、プリントごっこでぎったんばっこん何色もの原稿をつくっては床に陣取り5、6回の重ね刷りをしていた頃が今や昔、紙質や色味にはこだわるけれども、印刷はクリックひとつで済んでしまう完全プリンター任せになってしまった。
あのプリントごっこの印刷ズレも、アナログ感や手作り感として捨てがたい魅力ではあったけれども、前屈みで(100枚×5刷=)500回ほどのぎったんばっこんを繰り返す徹夜作業による背中から腰にかけての多大なる負担、そして数年前ついにプリントごっこ自体が生産中止となってしまっては別の方策へとシフトせざるを得ず、遅まきながらも我が家の年賀状にも近代化の波が押し寄せた次第。
こうしてパソコンに向かいブログを更新している私の横では、今まさにプリンターがフル稼働して、私の年賀状を少しも休まず印刷してくれている。一枚一枚を丁寧な高画質印刷にしているので、プリンターは火を吹くかと思うくらい大車輪の活躍だ。
そしてしばらく音楽もかけずに、ただなんとはなしに単調に繰り返されるプリンターの動作音を延々と聞いているうちに、この音の適切なオノマトペ(擬音)とは一体なんなんだろうかと思った。
たとえばパトカーのオノマトペは”ピーポーピーポー”であって、これに勝るオノマペはない。機関車は”シュシュポッポ”で、ロボットは”ウィーンガシャン”、雷は”ピカーッゴロゴロゴロ”で、くしゃみは”ハクション”、沈黙にさえ”シーン”という具合に、世の中のありとある事物事象には記号化されたオノマトペというものがたいがい存在するが、このプリンターは果たしてどうだ。
この世にプリンターが誕生してかれこれうん十年も経っているというのに、プリンター動作音の”これだ!”という最適なオノマトペが未だにないとはどうしたことだ。こんなことでは、来るべきユビキタス社会に示しがつかないではないか。そもそもユビキタス社会のなんたるかをまったく理解していないが、ちょうどいい機会だ、ここで「プリンターのオノマトペ」を明文化することにより是非これからのユビキタス社会に役立てていただきたいものだ。
こうして擬音化をするために、私は改めてプリンター動作音に耳を澄ませてみた。
なるほどこれまでオノマトペ化されてこなかっただけあって、実に曖昧な音の連続である。しかし何枚も何枚も印刷音を聞いているうち、私はひとつの結論を導き出した。
ブリンターの動作音、そのすべてのメーカー全機種が同一かどうかは知ったことではないが、少なくとも我が家のエプソンブリンターのオノマトペは、ズバリこうである。
「ほーにょ、ほにょほにょ…」
さかなの子ではないし、青い海からやってこない。もちろん言葉には意味のない"ほにょ"だ。
こうして”ほにょ”がしばらくつづき、印字のヘッドがトップに戻るとまた
“ほーにょ、ほにょほにょ…”と繰り返される。
プリンターのオノマトペ、それは
「ほーにょ、ほにょほにょ」だった。
しかし話はこれに止まらない。
このプリンター動作音、"ほにょ"と聞こえたあとも空耳のように違う音へと変容し、しかも今度は既存の言葉や単語に聞こえてくるのだから不思議だ。
たとえば「ほーにょ、ほにょほにょ」が次にはこう聞こえてきたのだ。
「ホーネ、骨骨骨…」
これなどは"ほにょ"と系列が近しいが、たとえばこうも聞こえたりなんかして、プリンターは私を戸惑わす。
「メイク・ラヴ、メイク・ラヴ、メイク・ラヴ…」
この機械めが。
さらに次には「メイプル」と聞こえてきもし、突然「メイプル」と言われてもと動揺を隠せない私に、プリンターは次々と間髪入れずに変幻自在な擬音を放ってくるのだから、次の年賀状ではどう聞こえてくるのかもう耳が離せない状態だ。
そんなわけで以下、プリンターの暴走ぶりをここに一気に記してみようと思う。
「ミニクラブ、ミニクラブ、ミニクラブ…」
「上の位、上の位、上の位…」
「民間、民間、民間…」
「ウィルコム、ウィルコム、ウィルコム…」
「売れっ子、売れっ子、売れっ子…」
「マッコイ、マッコイ、マッコイ…」
「はっけよい、はっけよい、はっけよい…」
「ラヴミー、ラヴミー、ラヴミー…」
「9回、9回、9回…」
「めいこい、めんこい、めんこい…」
「ニュートラ、ニュートラ、ニュートラ…」
ここに挙げたすべてが、私が意図してこう聞こうと自分の耳を誘導したつもりはまったくなく、耳は入ってきた音の繰り返しが次第次第にこう聞こえてきたにすぎないが、"民間"だの"9回"だの、なんとまあ一貫性のない言葉の数々だろう。
このテキストを見ながら、あなたのお家のブリンターと聞き比べてみて欲しい。きっといくつかの言葉に誘導されて同じように聞こえてくるはずだ。そして「ああ、このブログを書いている人のうちのプリンターと、私んちのプリンターの音は同じだったんんだなー」とでも思っていたければこれ幸いだ。や、別に幸いでもないな。ほーにょほにょほにょ。
# by wtaiken | 2011-12-26 00:47