ザ・デビュー   

私が監督している現場であるにも関わらず、カメラマンがカメラを担いだ状態で被写体に向かい「ハイ、ヨーイ!」と仕切っている。現場はその号令に従い、息を殺し身を引き締めて本番の用意しているじゃないか。しかもカメラマンは続けて「スタート!」とまで言い放ち本番がはじまってしまう。それどころか演台上の出演者の演技がひとしきり済むと「カットー!!」と高らかに声をかけ、そのうえアングルが納得できなかったのか首をひとつ傾げると、監督の私を差し置いて「じゃあ、続けてもひとつ行こうか!」とテイク2の要求までしているのだ。
本来ならばそのすべてを演出の私がすべきことであるのに、どうしたことかこの現場でイニシアチブをとっているのはカメラマンの高橋創さんだ。
なにやってんだよ演出はっ!と見渡せば、本来モニター前にかぶりつきで画像の細部にまで神経を尖らせているはずの私はそこにすらいないのだった。
じゃあ監督の会田は、一体どこに。

これは凄まじく寝苦しい今年の熱帯夜に見た私の悪夢などではない。私は監督としてすべき職務のすべてを放擲してしまったのだ。なにがこの私の身に起こったというのだろうか。
よっぽど腹に据えかねて「もう、バカーッ!」と捨てゼリフを残し現場から立ち去ってしまったとか。もしくは不甲斐ない演出ぶりに、トイレへと場を離れた私の不在をいいことにカメラマン主導で「それっ、いまのすきに!」とばかり、撮影をとっとと開始してしまったとか。
いやいや、私はその現場にちゃんといるのだ。いながらにして私は、カメラマンの高橋さんにすべての仕切りを任せてしまっている。監督の私はいるのに、不在なのだ。いるけどいない。いないけどもいる。まるで禅問答のようだが、これは致し方のない状況なのであった。
だって被写体、つまり演台のうえで舞台メイクを施し悦に入って喜々として演じているのが、かくいう演出の私なのだから。てへへ。

業界歴20年にして、ついに私は自作の監督作品で役者としてデビューすることになってしまった。例えば映画界において、洋の東西を問わず、監督自らが出演もしくは主演する事例は数々あれど、広告業界の、しかも15秒や30秒と枠の定まったCMよりは長く、そしてより多く商品特性を語り訴える用途として使われる店頭用プロモーションビデオにおいて、監督がのこのこと出演するケースはそうはなかろうと自負している。や、別に自慢するほどのこっちゃないけど。

そもそもこの仕事は「会田さんの知り合いの役者で出演者を固めて、面白いものをつくろー!」という番組のタイトルコールみたいなノリからはじまった話で、打ち合わせの初期から「どうせやるなら」と、ヒーローもの番組の体裁を引用して商品特性を謳うかなり思いきった内容となり、いまだ第二回目の公演の目途すら起たない休眠中の自らの劇団ワールドツアーからも、稲見雅文と村島リョウのキャスティングは構想段階からあった。
さて、ヒーローものとなると必定、敵対する悪役が必要となろう。仮面ライダー対するショッカーみたいな図式である。大日本人対する獣みたいな、キカイダー対するダーク率いるプロフェッサーギルみたいな役柄である。演出である私の今回の悪役のイメージは、このプロフェッサーギルに近かった。c0018492_1483454.jpg






←こいつが「人造人間キカイダー」に出てくるプロフェッサーギルだ。んー、さも悪役ぅ。

さてはて、じゃあ知り合いの誰を配役しようか、と、しばし逡巡。ふと何気なく見た鏡の中、なんとまさにプロフェッサーギルがいたのだった。あ、ギルだ、オレ。

記録的猛暑であるにも関わらず、我関せずとむさ苦しいワンレングスの私の髪型は、まるでこの日のために役作りで伸ばし続けてきたとしか思えなかった。ジャパニーズ・ロバート・デ・ニーロとは私のことで、被りモノもなくこうも悪役臭の漂う髪型のやつはそうはいないだろう。即決だった。ここに無理矢理誰か知り合いを充てがうより、演出の私の判断はズバリ「ここは会田でいこう!」だった。

c0018492_1514097.jpgてなことで、こんな感じで出演しました。
いくら白髪が増えてきたとはいえ、これは染めたんだよ。ヒゲもつけてね。
この写真、自分では、お、「シャイニング」のジャック・ニコルソンに似ている!と思ったんだが。えくぼが...。えくぼが...。
photo by スタイリストの岡田さん。






c0018492_152155.jpg出待ち。
モニターチェックのためにメガネをかけると、お、鈴木清順に似ている! と思うんだが。えくぼが...。えくぼが...。

隣にいるのは、悪役コンビのプロデューサーの竹谷さん。プロデューサーも出るんです。他の出演者の出番を優先しつつ、空き時間で撮影するからということで、結局この姿のまま6時間待ちだった竹谷さん。すいませんでしたあっ。私が首領ならば、竹谷さんは、ショッカーの死神(by天本英世)的な存在。似ていると評判です。

c0018492_1524385.jpgバックは合成するためのグリーンバック。
衣装は、他の人に比べて一番手間がかかっているそうです。そりゃそうだよ、こんなの売ってねーって。じ、自分だけっ!ズ、ズルイっ!と評判です。いいんだよ、監督特権行使!








c0018492_1531885.jpgノリノリだよ、こいつ。そして猫背。
手前が私の撮影中仕切ってくれた撮影の高橋創さん。図らずも、創さんは劇場版ウルトラマンのカメラマンだったりする。










編集・MAさらにクライアント試写が順調に進めば、8月末からとある店頭では、私の裏返りそうなキンキンの声が売場に響いてしまうのだ。なんとまあ恐ろしい。
他に、ワールドツアーからは稲見雅文と村島リョウ、さらにドラマやCMでちょくちょくお見受けする濃キャラの土井よしお氏と最近ナレーション仕事をお願いしている白神直子さんも出演。"も出演"って、この4人がメインなんですけど。その写真ひとつないところが"オレオレ"キャラの私らしいな。ごめんよ、みんなー。

まだ公開前なので、クライアント名もどこで流れるかもインフォメーションできないわけだが、それはまたいづれ。

by wtaiken | 2007-08-21 02:42 | ああ、監督人生 

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