2016年映画館鑑賞映画総括 其ノ伍   

44本中の34本まできたところで「ラ・ラ・ランド」絶賛が2回続き、3月になってもまだ去年の劇評をしているという、誰のなんのためにもならない「2016年映画館鑑賞映画総括」の5回目です。話が横道に一旦逸れてしまうと行ったっきりのまま終わってしまうことは十二分に考えられることなので、たとえばやっと読破した「騎士団長殺し」については一言も触れずに、早速35本目から再開しようと思う。

あ、やっぱ「騎士団長...」について一言。村上春樹の小説でははじめて「ああ、もういいや」とイライラして途中飛ばし読みしちゃいましたよ。第1部の中盤まではかなり面白く読んだんだけれども。免色さん、面白い人物造形だったし。むしろ途中までは「一体どんな物語世界へ連れて行ってくれるのか」とワクワクして読んだくらい。笑えるセンテンスもこれまでより多かったと思うし。それがイデアが顕れたあたりから「お、こりゃ雲行きが怪しくなってきましたよ」と訝り、いよいよメタファーを遷ろいだしてからはもう「これぞ冗長!」と声を出して批判しちゃったくらい。ただ終わり方の余韻の残し方は悪くない。

あ、そうだ、 "終わり方" に触れたので、ついでにもう一言。アマゾンのレビューなんかを読んでると、「第3部に期待!」とか寝ぼけたこと書いてる人が少なからずいるけど、第2部でこれ完全に環は閉じてるんで、続かないですよ。
冒頭で、妻と離婚して結局元のサヤにおさまるまでの期間に、主人公の「私」の身に起きた奇特な体験について語るよという記述があり、そしてタイトル通りの「騎士団長殺し」は起こり、イデアは消滅し、第2部の終わりではきちんと妻とは元サヤの今の視座に戻ってるんだから、こりゃ小説としては完結してますでしょ?
仮に主人公と彼の周囲の人物によるその後の話が、万が一、億万が一にも書かれるとするならば、それはもはや「騎士団長殺し」というタイトルではなりえない話しで、同様の登場人物らによるそれはまた別の物語だ。
「いやいやだって多くの謎が残されたままだし」なんて言い出す人には、すべてがキレイさっぱり数式のように解決された小説なんてあるかね、と問いたい。含み、余白、のりしろ...なんでもいいけど、そういったところに我々受け手は想像力を巡らせ埋めていく作業もひとつの楽しみ方なんだろうし、 小説家もある程度はゆだねもするもんだろうしね。
十把一からげに「村上春樹を読んでるのはただファッションだけ」と断ずるお笑い芸人の意味不明な意見など耳も貸さずに、これからも私は愛読者として新作を期待しつづけますよ、たとえ今作にはガッカリしたとしても。てか小説をファッションで読んでなにが悪いんだって話ですよ。ま、いいや、耳を貸さずに、なので。


ああ、やっぱ長くなった。さあ、早速行きましょうよ、ホントにもう。



35.「レッドタートル ある島の物語」
ジブリ的な絵柄のジブリ作品でない映画が未曾有のヒットを飛ばし、その裏ではまったくジブリ的でない絵柄のジブリ作が大コケするという。鈴木プロデューサーも「 (某作とは比較にならないほど閑散としているので) とてもゆったりとした気分でご覧いただけます」的な、自虐的な宣伝をしてましたが。作家に惚れたプロデューサーが、ジブリの看板を掲げて全世界へ紹介したかった、それが大赤字になろうとも。その心意気に、ちょっと心服。個人的には、ジブリらしからぬアーティスティクな絵柄、セリフらしきセリフを排し、アニメらしく動きですべてを語るという演出、物語も現代の寓話としてとてもよかったと思う。なんにせよ、子供が出てくるものは、ただそれだけで点数高くなっちゃうんだけど。


10月
36.「ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK-The Touring Years」
もはや印象にないドキュメンタリー。なんとなくビートルズがツアーをやめてレコーディングのみのバンドになった経緯が「へえ、そうなんだ」とは思ったには思ったんだけど、もともと個人的に今ひとつハマりが悪いロン・ハワード監督は、ドキュメンタリーを創らせてもいまひとつピンとこないんだなあと思った次第。



37.「七人の侍」
フィルム傷のないキレイな映像はクライテリオン版で鑑賞済みだったので、あとはデジタルリマスターがどれだけ音をクリアに再現させているかが大きなポイント。で、やっぱり冒頭の村人らの寄り合いシーンの、半狂乱、絶叫するその他大勢のセリフは所詮無理! 聞き取れない!字幕出して! でしたが、さすが名の通った名優らのセリフはキレイに聞き取りやすくなってたんじゃないでしょうか。
久しぶりに大スクリーンで鑑賞。村へ行くまでの、七人が次々集まってくるところですでに満点を叩き出す映画です。特に、志村喬の侍ぶりに心服して、昇り傾斜道をどうスカウトしたものか誰が言い出すのか、距離を保ちながら後を追う村人3人を、疾風のごとく追い越して弟子にしてくださいとすがる木村功に、さらにどけどけと割り込む三船敏郎、このシークエンスの、なんとも愉しくも美しいことか。今回は特に木村功の、キラキラした瞳で他の侍たちを観ている視点が印象的でした。


38.「ジェイソン・ボーン」
つくられる度にボーンの謎が増えていくという、続編のための後づけもそろそろネタが尽きて、カラッカラの出がらしでもまだなにかを絞り出そうとしている感がありあり。アクション映画の一時代をつくったシリーズではあるけれど、やはり欲をかかずにトリロジーでやめておけばよかったのにパターンにこのシリーズも墜ちたか、と。引き際は肝腎です。
で、ネタバレを承知で最後に一言付け加えると、ラストのアリシア・ヴィキャンデルの表情。あれさー、悔しがるんじゃなくって、余裕で "やっぱり出し抜いたわね" の「ふっ」と微笑むくらいの、どっちの意思で動いていたかを観る側に曖昧なままで終わらしておけば、彼女のキャラクターも謎めいて、もしまだ続編をつくるつもりなら、彼女の今後の展開に少しは期待がもてたのに、と思いました。ポール・グリーングラスももう別の作品にとりかかるべきです。


11月
39.「インフェルノ」
地球環境や全生命体にとって最大のガンは人類だって話はありふれていて、そのガンを取り除く「人類を減らしましょう」的な選民思想モチーフの映画もかなりあって、近年ではそれを面白おかしくやった「キングスマン」とかあるわけだけど、これをシリアスなサスペンスとして成立させるならば、それなりのきちんとした設定をはり巡らせないと私は冷めてしまうわけで。※ネタバレするので、以降はご注意

たとえば「人類撲滅」を単なるカルト宗教の教義・思想から実行に移すには、それなりの人員と規模が必要になるはずで、しかもそれを包み隠して秘密裏に...どころか堂々と全世界に発信している危険人物と目されているならばその身元調査は詳細を究めているはず。当然近親者から恋人も特定されてしかるべき。そう思っているから、その人物が物語終盤で明かされた時、ええーマジでえ、と思ったし、これってこのシリーズいつものパターンじゃんと心底ガッカリでした。しかも男からその意思をついで人類撲滅を実行しようとするんだけど、とにかく些細なことでもいいからその人物がそんな究極な行動へと突き動かす、全人類を呪うに能う、もう身勝手でもなんでもいいから動機が欲しいわけですよ。それがない。ただ遺志を継ぐだけ。そもそも危険思想の男も「愛する人ができたから、もはや実行に移すしかない」ってその動機もわけわかんないよ。それでとんでもないことが起こるかもしれないわりには全体的に動員されている人員がとにかく小規模すぎ。犯罪者側も追う側も。全人類死ぬかもしんないんだぜ、おいもっとみんな必死になろうぜ、なお粗末な体制。そんなところからも垣間見える、とにかく映画全体としてのスケールダウン感が半端ないです。だったら今更つくらなくってもよかったんじゃね?な映画。もうこれが原作通りのストーリーなら、こんな陳腐なサスペンスがベストセラーになっているのかと愕然ですわ。


40.「スタートレック BEYOND」
なんだか可もなく不可もない、当たり障りのない、大作チックな映画に成り下がったなあ。やっぱりなんだかんだいっても J・J の2作の方が格段に面白かった。もはや死に体、シリーズは一旦ここで終焉した方が潔くていいんじゃない?


41.「この世界の片隅に」
監督の片渕須直がこれまた宮崎駿門下。2016年を席巻した庵野といい、「君の名は。」の作画監督安藤雅司に今作の片渕監督。おそるべし宮崎駿のDNAな2016年だったですね。いやあ観終わった後しばらくしてから余計にじんわりきたというか。なかなかもう一回観ようかっていう気には軽々にはなれなかいけど、間違いなくこれは傑作でした。時代背景も描写もきっと徹底しているんでしょうね、私は戦前も原爆ドームの元の姿も知らないけど、原作漫画こうの史代タッチでありながらも、これは正確な描写なんじゃないかと感じたし、米軍戦闘機への迎撃描写なんて、アニメ的でありながらも止めコマとして見せる演出に、これはお見事!としかいいようがなかった。淡々とした日常に中に大意としての戦争が忍び込んでくる不幸、それでも人生はつづいていく、そのかすかな光を感じさせる終わり方にはドーンと感動しました。"ドーン"と感動って表現もおかしいんだけど、そんな感じ。
事務所の独立問題で消えたかに思えたのんがこうして注目を浴びる作品に出逢えるってところが強運だし、その強運を引き寄せる "なにか" があるっていうことなんだろうな、声優としても最高でした。あとコトリンゴの音楽も最高。こんな映画つくられたんじゃあ、宮崎駿も黙っちゃいられないだろうなってことで、復活することになったし。


42.「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」
なんか期待していた続編と違う。といいつつも前作がどんなだったかも薄ら記憶しかないんだけど。これまでももちろん子持ち役は経験済みとはいえ、トム・クルーズと娘だったかもしれない若い女の子との抱擁シーンには、そういう歳になったかトムも!と、まったく同い歳の私は感慨もひとしお、ちょっとジーンときちゃいました。でもやっぱり今年は総じて「この続編、なくてもよくね?」な作品が特に多かったような...


43.「海賊と呼ばれた男」
珍しく仕事絡みで鑑賞。んー、上っ面をなぞっただけですね、これは。この監督の作品については食わず嫌いで通していたのでこれまでの作品歴からはなにも言えないけど、この一作から判断するに、余計なCGに凝って、演出としてするべき核心にはまるで頓着していないんじゃないでしょうか。と思ってしまいました。山崎貴監督ファン、すいません!


44.「ローグ・ワン / スター・ウォーズ・ストーリー」
タイトル長いよ、しかも中黒点多いし。それはさておきー
結論から言うと、ラストのダース・ベイダーの古今無双な最強シスっぷりをして、そこまでの映画としてのグダグダを許させるかどうかで作品評価が分かれると思うんだけど。で、私は「はい、ダメー!」でした。
※以降ネタバレ注意です

そりゃさ、あのラスボス登場っぷり、うわっやべーの来ちゃったよ、な、反乱軍の無名の兵士たちの絶望感たるや、もうこのシーンに興奮しないスター・ウォーズファンはいないだろうさ。もうこれじゃーん、これこれ、エピソード3で観たかったのこれよぉ、な「待ってましたー」が出たわけだけど。でも、そこまでが退屈すぎ & ダメダメな展開すぎ。
デス・スター完成間近になるまでなんで情報をリークしなかった? ギリギリになってからようやく伝令を遣わせられたのはなぜ? さらにその伝令パイロットに、デス・スターの破壊ポイントの情報もついでに託せられなかった? そもそも生きているか死んでいるのかもわからない友人フォレスト・ウィテカーにそれを送りこみ、さらには同様に生死もわからないはずの、生きていてもどう成長しているかわからない娘に託すかね? で、決死らしい作戦に挑んだら相変わらず帝国軍のセキュリティの甘さたるや...。あんな小さなトルーパーがいたら即刻拘束でしょ、普通は。と、こうは書きたくはないけれど「ツッコミどころ多すぎ」。
名前も失念しちゃった南国ビーチみたいな惑星での攻防も、シールドをやぶるやぶらないなんて、今度はほとんど「ジェダイの帰還」まんまな展開。もはや旧3部作の遺産のみでご機嫌伺いもたいがいにしてくれ、と言いたくもなるよ。
そもそもデス・スターの図面がここにありますよ情報を送るとか回りくどいし、いきなりの図面奪還作戦でもよかったと思う。まあそれじゃああまりにも芸がないというなら、せめて余計なキャラクターに向かわせる段取りなんか踏まずに、反乱軍直に重要情報を託してくれんかねえ。ディズニー傘下におちて、必要以上に「家族愛」なんかをストーリーの核に据えようとするからこの体たらくだ。
それと一番ガッカリなのは、最後のレイア姫の表情だよ。CGの出来云々はおいて、あの笑顔はないだろう。そのデス・スターの図面を手にしたところからが大変なんじゃない? 先の先までわかったような笑顔じゃなくて、決意も新たな、これからが本当の戦いなんだというひきしまった顔で「HOPE」って言うべきなんじゃないかなあ?
なんか日本にきたギャレス・エドワーズ監督がクロサワ映画からの引用なんてリップサービスしてた、仲間が集うあたりもワクワク感が乏しかったし。それは登場人物の魅力不足に負うところが大きいかと。で、八犬伝的な、七人の侍的な集い系に注力するより、難攻不落な城を攻略する作戦ものあまたある傑作映画でも研究して、いかに帝国軍機密書類を奪還するかのミッション・インポッシブル・スターウォーズ版くらいのスリルとサスペンス溢れる戦争映画が個人的には観たかったよ。
それでも前述の、さすがの存在感で圧倒するダース・ベイダーだとか、意外と盲目のドニー・イェンなんてもっと活躍してほしかったり、モフターキンのCGIもさることながら、声ピーター・カッシングまんまやんけーに感心したり、楽しんだところも多々あったんだけれど、ダメなところといいところを天秤にかけると、我慢してまでももう一回観る気にはなれなかったな。
おじさんスターウォーズファンとしては、こうして毎年末にブツクサ不満たらたらこぼしながらも、それでもしっかり公開日に期待しつつ観に行くことになるんだろうね。


と...。やっと終わりました、去年映画館で観た映画44本レビュー。
一昨年は「スター・ウォーズ / フォースの覚醒」に半ばガッカリしつつも、年末最後に観た「クリード」には落ち込んだ気分をカバーしてあまりあるほど救われたけれど、2016年は落胆で締めくくりってのは、ちと残念だったなあ。

では、これにてひとまず私としての一大作業がひとつ終わった感じです。次はなに書こうかな。

by wtaiken | 2017-03-18 02:55

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