2016年映画館鑑賞映画総括 其ノ肆   

9月
32.「セルフレス / 覚醒した記憶」
世の中スター・ウォーズエピソード7以降、隠れ流行語的に "覚醒" 使いばやりだ。監督のターセム・シンといえば、CMディレクターであり、各国美しいロケーションを求めて完成に数カ年かけたという2006年「落下の王国」でのこだわりの圧倒的映像美こそが真骨頂だと思っているのだが、それをピークにして以降「インモータルズ」だの「白雪姫と鏡の女王」だのとハリウッド大作をそれになりにこなしていくそれなりの監督に収まってしまった感がある。これもその系統の一作。普通に面白いし (ホメ言葉) ラストシーンは「ショーシャンクの空に」オマージュかな? 個人的にはバッドエンドもありだと思ったけど。


33.「スーサイド・スクワッド」
偏った映画通ら選出による「映画秘宝」2016年の (一応 "とほほ映画" という表記で配慮している) ワースト映画を、DCコミック映画勢が見事にワン・ツー・フィニッシュ決めた、そのNo.2。※1位は「バットマン vs スーパーマン」。これは以前書いたけど、とにかくこの内容にしてあれだけの期待感を煽る予告篇をつくりえた予告篇ディレクターに惜しみのない拍手を。とにかくなにからどう切り出していいかいっぱいありすぎて楽しくなっちゃうくらいにひどい設定の連続。俗にいう "ツッコミどころ満載" っていうやつで、そもそも私は一連のDCコミックス映画作品のボタンの掛け違いは「マン・オブ・スチール」にあると思っていて、スタート時で敵キャラをいきなり異星人にしてしまったところが味噌のつきはじめだと確信している。DCシネマティック・ユニバースの冒頭からいきなりド派手な異星人VS異星人なんてことをやっちゃうから、「バットマン vs スーパーマン」でもレックス・ルーサーだけではバトルが地味すぎるからと、出自の設定がよく理解できない "ドゥームズ・デイ" なんていうバケモノを出さざるを得なくなるという、2作目にしてこの破綻ぶり。で、もしその軌道を修正できるとしたなら、私はこの悪役ばかりの特攻集団劇で可能だと思っていた。まともな頭じゃ解決できそうもない汚い仕事をあえて減刑という約束とともに任せてしまうというやつで、たとえばなぜ救出になければならないのかわからない単なる一般人をどこぞ難攻不落なところから救い出す作戦だとか。解決していく過程で、実は人類の存亡まで関わるかは置いて、重要人物であることがわかるみたいな。とにかくなんでもいいんだが、もうさーよりによって "魔女撃退" ってのが、もう...。人類にとって、そのエンチャントレスなる敵がどれだけの脅威かもよくわからないし、あの宙空にいろいろかき集めている光る珠は、あれは一体なんなの? なにがどうなってるの? その魔女の力を封じるための制御装置みたいなものもあっさり反古にされて暴走させちゃうってなんなん? それを回収するための特命って、特攻野郎たちにとっての意外などんでんも観ている側からすると「別にそれがどうした」だし。「これからありえるかもしれない宇宙からの脅威に対し、特殊部隊をつくるべきです。」「誰もやんないよ、そんなの」「減刑と約束して、死刑囚らを」「いいねえ」「じゃ魔女もスゴいからメンバーにしましょうよ」「いいねえ」で、暴走。「てめこのやろう、人類を裏切りやがったな。許さないわよ!」ってバカなんじゃないの、出てくるみんなが揃いも揃って。宇宙の脅威からなら、バットマンらジャスティス・リーグがそのうちできるんだから任せときなさいよ。と、それはここでは言わないにしても、じゃあなんだって炎を操るだの射撃の腕がスゴいだのといった特殊能力のない、ただの暴力に歯止めがないだけのヤンキー娘ハーレイ・クインが人類存亡をかける部隊メンバーに含まれるわけ? 登場人物らからもそこについての一切のエクスキューズはないし、てか台本段階でなんか疑問に思う人は総勢何人か知らない製作陣にひとりもいないわけ? 原作がメンバーに加えてるし、じゃダメ。まずそういったところからすべて組み上げないと、台本というやつは。たとえばこの作戦には是非ともジョーカーが必要で、それをかり出すための人身御供でしかない、とかさ。ジョーカーが必要な理由? そんなのはわしゃ知らんよ、脚本チームじゃないんだから。でも観る側としては、とにかく一々に、なんか頷ける設定が欲しいわけで、そう細部をどんどん置きっぱなしに話が進んで行くからもう気持ちが離れる離れる。ジョーカーを演じたジャレッド・レトのピリピリした感じは決して悪くないんだけど、裏もなにもないただただ一途なハーレイ・クインラブラブ設定じゃ浮かばれないよ。でもって極めつけは、スパッと潔く一切の私生活をぶったぎって対ゴジラに特化した「シン・ゴジラ」とは真逆の、えー、こんな後半戦でまだ回想シーン差し込むかね! のいつまでたっても「悪役も1人の人間」描写がくどい、くどすぎる! いやあ、ひさしぶりにひとずきる映画を観てから早半年弱、ようやくここで一気に不満をぶちまけた。私としては「バットマン vs スーパーマン」なんかより数段劣る、去年の断トツワースト・ワン。ハーレイ・クインフィギュア熱に犯されなくて済んで良かった...? とも言える。当ればなんでもよし、品質は問わない? DCシネマティック・ユニバースとしては、もう続編も製作決定。観ません。ハーレイ・クイン主役のスピン・オフ女性ヴィラン特攻部隊ものも創るんだってよ。それには新しいキャットウーマンも。観るかも。


34.「君の名は。」
「人間・失格」みたいな、「。」句点打ちゃOKみたいな。基の、というか元祖というか、数寄屋橋のマチコ巻き「君の名は」とはなんの因果もないようで、戦争という悲劇をはさんで描かれる男女のすれ違いを、今作では未曾有の天災をはさみ込んだ男女のすれ違いという意味では親和性があるんだけど、そこに時空をも絡めた点がミソというか「時をかける少女」というか男女入れ替わりまで取り込んでの「転校生」だったりもする、これまでの新海誠集大成「ベスト・オブ」的な側面のある、とにかくてんこ盛りな映画。ローアングルから見上げる主人公込みの空の捉え方なんてもう毎度お馴染みのカットって感じだし、キラキラした東京の情景描写や「口噛み酒」 (あたしゃ存在すら知らなかったよ) すらもキラキラと美しく表現したり、最後の最後まで頑とした姿勢の父も嘘みたいな話になぜか突き動かされるしで、とにかく醜いだの汚いだのといった暗部を一切描かないような作風だったり、奇跡的すぎの、ありえないことの連続なストーリー自体、もしかしたら好き嫌いの別れるところかもしれないけれど、私は、とっても愉しみました。面白かったです、単純に。これは以前書いて繰り返しになるけど、自分のおっぱいもみもみしながら「よかったぁ」と泣いている主人公の女の子 (?) の姿を見て、わははと笑いながらも涙がこぼれちゃう映画なんてそうはないですよ。それにしても、それまでの興行成績わずか数億円の、一般的に知名度も高くないだろう監督が200億円超えの超特大ヒットを生み出す、というか世の中がそれを導いたメカニズム、そここそが私的には一番興味深いところ。作画監督の安藤雅司はジブリ出身で、ジブリ印の絵力もきっとヒット要因のひとつだろうね。このジブリ、恐るべし、については、このあとにも触れることになる。



寸評のつもりが、酷評と絶賛の2作で長くなってしまった。3本止まりだけど、今日はここまで。
カウントミスで、去年映画館で観た映画総数43 → 44本に上方修正なので、残りあと10本。もう2回くらい続きそう。ではまた。

by wtaiken | 2017-02-26 04:31

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