マイ・シネマ・ランキング2015・続々   

先週は角川シネマ映画館で市川崑特集の一本、「犬神家の一族」を観てきました。
実は市川崑を知ったはじめての映画は中ニ・夏の「獄門島」からで、角川文庫の杉本一文表紙画の禍々しさにようやく勇気を振り絞って手に取れたのがその年の春、つまりどっぷり横溝正史の世界にはまったときすでに「犬神家...」と「...手毬唄」は公開後、当時はレンタルビデオなど遥か未来のことであり、観たくてもどうにも観られなかった時代だったので、そこから数年後のテレビ・オンエア時にはもう待ちに待った感じで貪るように観た記憶はあっても、そのままテレビ・サイズですっかり満足してしまったのか、あるいは「ぴあ」あたりの情報誌でマメに網を張り、リバイバルや名画座でその金田一シリーズ両名作を映画館で観たのかもはや記憶が曖昧模糊としてしまってい、「初デジタル化」と謳われてもいるこの機会に観ておくかというモチベーションで、これまでの視聴回数などとても指折って数えきれない「犬神家の一族」を鑑賞し、そして来週には (こちらは残念ながらデジタル化はされてないようだが) 「悪魔の手毬唄」も観る予定なのだ。

改めて言うまでもないことかもしれないが、この金田一シリーズの特徴と言うべき母子愛描写が、傑作とされる第一作目「犬神家...」と第二作目「...手毬唄」には特に突出して明確に表現されていて、それがこの歳になると特にしみてくるのだ。
まあこの2作の作品・興行両面での成功がその後の女優 & 親子愛シリーズ的なしばりをつくってしまい、三作目「獄門島」原作の結末を改悪して以降の失墜へとつながっていくわけなんだが、そのすべての基となる「犬神家..」での母・高峰三枝子と子・あおい輝彦の演技が、ここに今更ながら特筆するほどよかったなとしみじみと実感されたのだった。二人が手に手をとって犬神家の広い居間を歩く "道行き" シーンは、美しくも悲しい、本当に感動ものだ。大スクリーンで今回観られてよかったよ。
清水宏監督作「信子」でのなまりのかわいい新米教師役や「元禄忠臣蔵」では男装の麗人な役を演じていた、つまり日本人形のように美形女優だった高峰三枝子による "ザ・ニッポンの母" な包容力で演じきった犬神松子は、ここにおいても到底リメイク版の富司純子は足元にも及ばない。そしてあおい輝彦の、片や犬神佐清を実直・誠実な青年として演じ、もう一方ではこの映画を象徴するアイコンである能面のようなマスクの青沼静馬を実に不気味かつおどろおどろしく演じ分けているところなんざ助演男優賞制覇もんでしょ、あれは。

...と、やっぱり熱くなっちゃうな、市川崑の金田一シリーズ。
角川シネマ館で観、そして観る予定の「犬神家の一族」と「悪魔の手毬唄」については、(もしや以前も少し触れているかもしれないけど) せっかくの機会なので、いずれしっかり書こうかと。ひとまず長くなった枕はここまでとしてー。

では「マイ・シネマ・ランキング2015」のトップ3へ行きましょう。


第3位.
「キングスマン」

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監督のマシュー・ボーンについては、以前確か「X-MEN : ファースト・ジェネレーション」で批判しているので、私が支持しないいくつかの理由を詳しくはここでは繰り返さないが、端的に記すなら、彼がお遊びの愉しいつもりで描くシーンの多くが、私には悪ふざけにしか見えないという点。また無駄に残酷描写が多く、しかもそれを笑わせようとしているところが正直「キライ」。
だから、ヒット・ガールは愉しく観られたけど「キック・アス」も、つづく「X-MEN : ファースト・ジェネレーション」も私は評価しない。
で、2作つづけてダメだったので、2年前に全米公開してロングランのスマッシュ・ヒットを飛ばし、作品的にもなかなかの好評を得ているらしかったこの「キングスマン」も、もしかしたらいずれレンタルで観るかもしれない程度のまったく興味の外側にあったんだけれど、去年6月にオランダ・ドイツロケハン渡航中の機内映画ラインナップにまだ日本公開前の今作があり、じゃあそうかい暇つぶしにでも観ておくかいぐらいの軽い乗りだったものが、最終的には「これはきちんと音のいい映画館で観るべき」という結論に達するほど気に入ってしまったという。端末が小さいのは致し方ないにしても、飛行音で音声がほとんど聴きとれないっていうのは映画にとっては致命傷。それでも「こりゃ面白い。映画館で観たい」って思ったんだから、映像力が相当なものってことなんだろうね。
つまりこれまで嫌悪感しかなかった監督の残酷描写が、今作では鼻持ちならない選民思想層に対して表現されているので、なんとなく「ひどい!」という感情は至らず、見せ方においてもポップに美的に表現されてい、さらにそれが笑いに昇華されているところが私にとってこれまでになくよかったところ。ちょっと教会でのそれは長すぎの気もするけど。
といった具合で、これまでのマシュー・ボーン評価下げポイントが逆に転じて評価「上げ」に貢献したので、あとはどんどん加点されていくのみ、という感じ。
よかったところは挙げるとキリがないが、熱望しつつ監督することが叶わなかった007シリーズへの偏愛、特に最近のシリアス路線は認めず、ロジャー・ムーア時代の荒唐無稽な悪役らが世界征服を企む大風呂敷をこそ愛してやまない感じを、全編に渡って訴えているところが好感。そのものズバリを丁々発止なセリフのやりとりでもしているし、たとえば悪のアジトの床のデザインが! もう昔の007っぽいし!
さらに007での、Mとかマネーペニーとかが通信しようとするジェームズ・ボンドの、任務そっちのけでしっぽり美女といいところで終わるラストも踏襲、というよりは如何にもマシュー・ボーン的というか今様というか、ハードコアにオマージュされていたりもして。
ほかにもルーク・スカイウォーカーとメイス・ウィドウの短いながらもよもやの競演があったり。
で、キリがないいいところを最後に2つで締めると、まずはかつては同胞監督のガイ・リッチーお気に入り、いまはマシュー・ボーン作には欠かせない存在のマーク・ストロングが、もう最高にかっこいい! 「これは、オレのだ。」サイコー! 個人的にはコリン・ファースなんかより断然よかったっす!
そしてなによりそのコリン・ファースをさらに差し置いて、もうほとんど主役といっても過言ではないエグジーを演じるタロン・エガートンなる若手俳優の魅力。続編、もちろん彼主役でイケるでしょ。

その他ぜんぜんトップ10には入らなかったけど、「セッション」のマイルズ・テラーとか、「メイズ・ランナー」のディラン・オブライエンとか、「スター・ウォーズ」のデイジー・リドリーとか、8位の「EX MACHINA」や「コートーネームU.N.C.L.E.」のアリシア・ヴィキャンデル、そして今作のタロン・エガートン...なんだか若手俳優の活躍が目覚ましい1年だったなと。

by wtaiken | 2016-01-24 01:25 | なんでもベスト10

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