マイ・シネマ・ランキング2015・続   

前回は8位「EX MACHINA」まで。今日もとっとと行きましょう。

第7位.
「思い出のマーニー」

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数少ない旧作からの1本。
たいがいの映画には賛否両論がある。それはどんな映画にも。「七人の侍」も「冒頭長老のセリフ、ほとんど聴こえないんですけど」みたいな理由で評価が低かったり、「ゴッド・ファーザー」に至っては「やくざ映画受け付けないんで」とか平気で言ってみたりして、とにかく予想だにしない、驚くべき理由で人の好みは左右されるのだ。で、ことこの映画については、比較的わかりやすい理由で好き嫌いが極端にわかれるんじゃないかと思う。つまりオチの部分。
公開時に、仕事場の映画好きな後輩からこの映画の感想を求められた。私はごく限られた作家によるアニメーションしか興味がなかったからこの映画を観る予定はなく困ったが、その後輩曰く「(全体的に) いいんだけど、自分的にはオチのところがダメでしたわ〜」とのことだった。
さて、それがなんのきっかけだったか、1年遅れでこの映画を観る気になった。で、結果はどうだったのかというと、言うまでもなく年間291本観た中の第7位。
これは宣伝もそうだったし、映画でもマーニーの登場からしてそれを "ネタバレ" というほど隠そうとはしていないので、ここで端的に内容を言ってしまうと、すなわち「ゴースト・ストーリー」なわけです。しかも優しい幽霊、「ジェントル・ゴースト・ストーリー」というやつ。
この分野でパッと思いつくのが、そのものズバリの「ゴースト / ニューヨークの幻」なんだろうけど、例の、ほぼ濡れ場と言われている、ロクロを回すデミ・ムーアの背後から幽霊となったパトリック・スウェイジが抱きしめる有名なワン・シーンしかしらないという、つまり観てもいないし今後観る気もないやつだとか。見知ったところでは、片岡鶴太郎と秋吉久美子演じる死んだ両親が突然息子風間杜夫の前に現れる浅草のシークエンスが最高の邦画「異人たちとの夏」、倉本聰脚本、若尾文子が幽霊になって夫藤田まことを見守る未ソフト化テレビドラマ「あなただけ今晩は」、小説だと室生犀星「童子」、このブログでかつて推奨したはずの橘外男「逗子物語」...などなど。好きだから思いつくのか、比較的私はこのジェントル・ゴートス・ストーリーに弱いらしく、上記「ゴースト」以外は、すべて感動して号泣しているのだけど、さて「思い出のマーニー」だ。
評価が2分化し、後輩が "引いてしまった" という肝腎のオチ部分、というかすべてが明かされるラスト、私は予想だにしていなかったので虚をつかれてしまい、そしてやはりここでも号泣 & 怒濤のエンディング曲にまたもや滂沱の涙でした。すなわち、人が道を踏み外しかけたとき、優しく手を差し伸べ道標を示してくれるゴーストの存在に。
正直ここ数年のジブリ、というか宮崎駿アニメにはなんら思い入れるところがなかったし、高畑の「かぐや姫の物語」もダメだったし、それ以外の監督作には興味のカケラもなかったけど、個人的にはジブリ作の中では傑作の部類に余裕で入りました。
まあ穫る穫らないはどうでもいいけど、まずは今年のアカデミー長編アニメ映画賞ノミネート、おめでとうございます。


第6位.
「クリード チャンプを継ぐ男」

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ここから先上位6本のすべてが新作で、そして映画館で鑑賞したものばかり。もしかしたら映画館で観ることで評価が少し高めになっているのかもしれないけど、それはむしろ逆であって、大きなスクリーンで観てこそ本来のされるべき評価になるんだろうと思う。そして上位6本は、本当に僅差、ちょっとした思い入れの差で順位が上下したのもので、去年は稀にみる公開作に傑作の多かった年だったことになる。
そして「クリード...」、実は「スター・ウォーズ」のあとに口直しくらいのつもりで観たら傑作だったというのがこれ。
私は、あまり筋肉ムキムキ賞讃 &大活躍映画だったり、チューブ・トップで汗をかきまくるタイプの役者・ミュージシャンも苦手なので、これまでシルベスタ・スタローンについては、真ん中の "スタ・スタ" のところがモタつくからいっそワンペアとして消して略称し「シルベローン」にしてしまえ! などと勝手に小バカにしていたくらいの扱いで、それに映画史に残るとされているロッキー・シリーズのすべては鑑賞済みであったものの「まあ普通に面白い」というそれ以上でも以下でもない程度の評価、だからランボー・シリーズは観たのが1本はきりだし、エクスペンダブルズ・シリーズに至ってはすべて未見という、要は「ほとんど興味の外側にある役者 (とその出演作) 」の一人であったわけ。
そんな個人評価の、「ロッキー・ファイナル」で終わったはずのシリーズが、ロッキーのライバルであり親友でもあったアポロの息子を主役にしスピン・オフ的に継続されたこと、そして全米公開後評価が高かったことから、じゃあ行ってみるかと軽いフットワークで観たわけなんだけど、それがもうホントすいませんでしたシルベローンさん、いや、シルベスタ・スタローンさんて感じでした。
闘い終えたはずの老齢ロッキーにもまだ闘いが残されていたこと、ハングリー精神からではなく、己がなにものなのかを知るためにあえて無謀な闘いに挑む若者クリード、その二人三脚のトレーニング・シーンに涙。もうオレ映画観て泣いてばっかじゃーんという感じなんだけど、随所随所に散りばめられた、クサい言い方だけど "人間讃歌" がこの歳になると響くんだよねえ。
決して懐古趣味の映画になっていない点、1試合1カットで撮るなんていうチャレンジングな演出もあり、すべての要素が "2015年版ロッキー新章映画" になってところがいいよ。もう老いたスタローン最高!
続編とはこうあるべき、最高に美しい姿としてシリーズが復活するという、個人的には「スター・ウォーズ」に抱いたモヤモヤをすべて蹴散らしてくれた映画。そしてなにより賞讃すべきは、あのSFの近年の傑作「クロニクル」に出演し、同監督による大失敗作とされてしまったブロッグバスター「ファンタスティック・フォー」にも出ていたマイケル・B・ジョーダンがすばらしいです! まだ間に合う! この映画の感動は是非劇場で!

ちなみに、クリードにつく伝説のスタッフたち、どんなパンチも受け止める名人、どんな傷もたちどころに塞いでしまう名人、すべて本物なんだって。なんだかそんなスタローンの熱い思い入れにもジーンときてしまうんだな、もう。


第5位.
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」

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でたー、マッドマックス! もう2015年はこの映画に尽きたね! って "尽き" といて5位なんだけど。
ジョージ・ミラーって、これまでのマッドマックス3部作以外なに撮ったか知らなかったし、周囲の映画通に言わせると「ベイブ / 都へ行く」もいい映画なんだそうだが、それにしたって17年も前の作品だし、マッドマックスとしてだと実に30年ぶりのシリーズ最新作、っていうよりは自身によるリブード映画って感じ。もはや過去の監督だと高を括っていた人がよもやの復活劇、しかも錆びてもないし古びてもない! てかむしろ若々しくもあり、ルックも編集も演出のすべてが "いまどき" のエンタメ作品になってっし、齢70にして自身の最高傑作を創っちまうとはな! もう文句なしの、傑作エンターテイメント映画。ド頭からダレ場一切なし! まさにいきなりのトップスピード、映画のストーリーそのままのテンションで一気にラストまで飛ばしまくる映画。「マックスのカリスマ性が乏しいんですけど...」だとー! そんなの関係ないじゃん! 映画全体にカリスマ性があるんだから。2015年は、この映画を劇場で観ずしてなにを観るんだ、というくらいの作品でした。
ウィークエイド・シャッフルで宇多丸が絶賛をし、次回のアカデミーとか賞総なめっしょー!くらいのテンションでしたが、ブロッグバスター、エンタメ、シリーズ物嫌いのアカデミー会員たちもさすがに無視できなかったようで、作品賞、監督賞をはじめとする10部門にノミネートされたのは立派。まあ正直最優秀作品賞にはならんだろうけど、それでも2015年の8本に選ばれただけでもすごいことです。
それにしても昨年は意外なシリーズ最新作が多かった。世の中的にはいらないといわれてしまった「シン・シティ」しかり、このマッドマックスしかり、ファイナルの後のクリードしかり、そしてスター・ウォーズも。うち2本も私のトップ10入りでした。


第4位.
「ジョン・ウィック」

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でたー、ジョン・ウィック! 若くして亡くなった愛妻の残した形見の犬が無惨にも殺されて、その復讐に立ち上がった伝説のヒットマンが、ただもう人を撃ちまくるし殺しまくるという、それだけの映画です。ええ。
この映画を受けつけない人の評価に多く見受けられるのが「犬一匹のためにありえないストーリーで、感情移入できません」...とね。... ええっとーですね、あのー、なんでもかんでも感情移入して映画を観ようとすな!と私はいいたい、そんな人には。端から高みの見物をする映画があってももちろんいいだろうし、そもそも "ありえない" 出来事、フィクションをフィクションとわかった上で、それを愉しむのも映画の醍醐味であるわけで、私は終始「おいおいおい!」ってツッコミながら、いい意味の "半笑い" でこの映画を観てました。針が完全に振り切っちゃっているので、もうキアヌ、超かっきーーって感じ。身のこなし、アクションのキレも申し分なし。
途中愛犬殺しの主犯、マフィアのボスのバカ息子が追いつめられて「なんであんな犬コロごときのために...」って言いかけたところを容赦なくジョン・ウィックに仕留められるんだけど、これってまさに観客の声を代弁するセリフであり、それをあえてすべて「言わせないよー」とばかりに途中でバッサリぶった切るところなんざ「そんなことはつくっているこっちが百も承知」と言わんばかりの確信犯って感じでした。
すでに続編製作が確定したようで、迷走していたキアヌもこれで完全復活ですね。脇を固める俳優もよかった。もう続編つくるんだったら...の次元大介なウィレム・デフォー、ドラゴン・タトゥーのときはなんと平凡な、魅力の乏しい役者なんだと思っていたミカエル・ニクヴィストが、ハリウッドでは「ミツション・インポッシブル」といいこの作品といい、悪役でいい味出してきてるし。始末したつもりのジョン・ウィックの執拗な銃撃に「もーう、ホントよくやるよ」的に微笑むところが特によかった。


さあて、残るはトップ3! 3/291は果たしてどの映画なのか?! それは明日。ではまた明日。

by wtaiken | 2016-01-20 12:13 | なんでもベスト10

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