航空性中耳炎   

耳鼻科の医者に「こうくうせい中耳炎だ」と言われたときには「口腔性?」かと思ったんだけど、 "航空性" なんだそうで。

6月初旬のオーストラリアロケ、5泊6日の強行軍のうち2泊が行き帰りの機上で、他のオーストラリア滞在中も毎日国内移動に飛行機を利用したせいで鼓膜が疲弊して、ロケの最後の方ではもう破れるんじゃないかというくらい耳の奥の激痛に、帰国後も数週間、まるでいつも海中にいるような耳の通りが悪い聴こえ具合に辟易としていたものの、病院へと行くまでもなくそのうち治るだろうと高を括って日に何度もツバを飲み込んでいるうちなんとなく症状も気にならなくなり、もとの日常に戻っていたはずの私の耳は、その実鼓膜の奥では完治せぬまま粛々と症状を悪化させていたようで、いつ先日ついに左耳が聴こえなくなる事態にまで進行し、慌てて耳鼻科に行くと「鼓膜の奥にたっぷり膿みが溜まっています」とのことで、数ヶ月前の海外ロケのツケがなんでまた今になって「航空性中耳炎」となって発露したのか先生も首を傾げたくらい。
初耳のその病名を聞いてからネットで調べてみると、風邪をひいているとかかりやすく、そういえば発作的に咳き込むと止まらない風邪をその時ひいていたなあと思い返され、予防として「搭乗前に鼻の状態を整えておく」ことが大切なんだそうだ。知らなかったよ。

いま毎食前にむくみを抑制する薬と、毎食後に化膿止めの薬を飲んでいるのだが、それでも膿みがすぐに溜まって聴こえが悪くなる。で、通院してはその膿みを抜いてもらうわけだが、これがもうとんでもなく痛いので、今日はその話を訊いてもらいたかったわけなのだ。

鼓膜の奥に溜まった膿みは、鼓膜に注射器を刺し込んで吸い出しますので、と医者は言う。
耳の中に注射器の針がスルルと入っていく様は、どこかブニュエルの「アンダルシアの犬」での眼球にカミソリをすべらせるシーンを想起してしまうような、思わず目を背けたくなるスリリングな感じがするけれど、施術されている方としては「刺す時チクッときますよ」と言うその瞬間さえ我慢できればとじっと目を閉じその時が過ぎるのを観念しながら待つほどに、思いのほか痛みは少なく、その替わりと言っていいのか膿みもさほど摂れなかったわけだが、その治療で聴こえが回復したのはたったの3日ばかり。1回膿みを抜きました、ハイ治りました、と簡単にことは運ばない。

薬がきれるタイミングを見計らったかのようにまたしても左耳だけがどこかの海中を彷徨うような状態になってしまい、ここはさのみ痛くもないから膿みでもひとつ抜いてもらおっと、などと通院の足取りも軽やかに向かったのだったが、2回目の吸い出しは一回目の数十倍に匹敵するほど痛く、それはむしろ「刺す時チクッときますよ」なのではなく、吸い出される数秒が地獄の責め苦のような痛みなのだ。痛みにそれは比例するのか、「今日はたっぷり摂れましたよ」と医者に見せられた注射器の中には吸い出したがために泡立ってしまっている、これがたっぷりなのかよくわからないけれど、確かに膿みが視認できた。これが第二回目の膿みの吸い出し。

でもまだそのときは「あーあ、痛かったよなあ」というくらいで済んだのだったが、今度の小康は1日のみ、仕事にも支障を来すので2回目の吸い出しからわずか2日後に三たび膿みを吸い出すことになったのだったが、回数を増す毎に痛みが倍増するようで、初回からすると優に数百倍とも思え、これまでの経験では結石の鈍痛に勝る痛みなしと思ってきたけれど、瞬間痛点を刺激する指数としてはそれにも増して衝撃的で、時間にしてわずかなんだろう注射器で膿みを吸い出している数秒が一体いつまで続くのかと思えるほどの苦痛に耐える時間に、施術されている側の目からはポロポロ涙が零れ落ち、気がつけば左手は空を掴んで硬直をしているといったありさま。
治療終わりの受付で、受付嬢、というかおばちゃんから「そんなに痛いもんなの?」と心配されるくらいに激痛で心身ともに抜け殻になっていたみたいで、自転車で帰る間もしばらくはその痛みの余韻が続いている、といった感じ。で、第三回目の膿み吸い出しの感想は「もう御免だ」だった。

と、その治療を受けたのが痛みの記憶も生々しい昨日のこと。こうしてブログを更新している今すでに早くも耳が聴こえずらくなっているという状態で、明日も膿み抜き地獄を味合わなきゃならないのかと思うと、あ〜あ、明日になんてならなきゃいいのに〜の、エキセントリック少年ボーイの心境なのです。

by wtaiken | 2014-09-11 22:47

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