裏紙センセーション   

今年も例年に違わずあっという間の一年であったなあと、2ヵ月綴りのカレンダーのめくるべき最後の一枚をめくってしみじみと思ったものだが、そのめくり終えたカレンダーの、もはや不要となってしまった裏面がまっさらな白紙を見ると、子供の頃、好きだった絵を描いていたのはきまって新聞に折り込まれた緑や黄、水などなど色とりどりの薄っぺらな印刷されていない裏紙にばかり、そういった不要紙を有効利用してきた貧乏性が50になった今でもひょっこり顔を覗かせて、つまりはなにも印刷されてない裏にはなにかを書き込まれなければ容易に捨てられないというこの性分は、確かかなり以前にもこのブログに報告済みであるはずだが、近頃の各企業、各担当者らの努力によって、以前に比べると無駄のない両面印刷プリント資料が幾分か増えたものの、それでもひと仕事終えるとたっぷり "使える裏紙" が手元に残ることになり、そんな紙の山が床からデスクの天板までの約60㎝にようよう届こうかという、そろそろ看過できないところまでA4の裏紙が満ちてきてしまっていたのだった。

これら白紙の裏面を仕事に有効利用するという行為は、ともすると守秘義務に抵触してしまうおそれがあるし、とあるA社の会議にカバンからとり出した自分用出力書類の裏側に、以前手がけたライバル会社B社のオリエン資料が記されている、なんてことも容易に起こりうる事態だ。だから家から持ち出すプリントにはなるべくこういった裏紙は使わないようにしている。だから使い道はたとえば自宅での確認用に、企画書や台本の稿を改める度マメに出力する程度にとどめる。あるいは仕事に限らず、今日買物をしなければならない品目など生活に関わるメモ書きに使ったりしたが、もはやこうしたまっとうな使い方をしていたのでは一向埒があかない、紙は減らない。

企画考案中であるならば、「ううーん」なんて悩んでいるオノマトペひとつ書いただけでその一枚を用済みとしてしまう。新しく買ったペンの試し書きに線を一本引く、たったそれだけのことでその紙はもう使い切ったことにしようじゃないか。爪を切る足の下敷きにし、切りとられた爪のカケラとともにまるめてポイだ。どうだろうか、なんだか裏紙御大尽にでもなった気分みたいじゃないか。いや待て、これでは資源の有効利用のつもりが、とんだ紙の無駄遣いみたいなことになってしまっているぞ。
しかしちぎっては捨てるように裏面白紙を乱雑に扱ってみたところで、それでも紙の山は目に見えて減っていかない。この程度の消費では日々量産される片面プリント紙には太刀打ちできないのだから、「もったいない活動」の実行もなかなか大変だ。

それにしても紙山を改めて見たれば、下層部の紙などはかなり以前のプリントであろう経年変化で煤けて変色をし、あるいは四隅が乱雑に折れ曲がってしまっている。これら痛んだ(?)裏紙にプリントをしたところでただただ見ずらいだけだし、出力中のプリンター紙づまりの原因にもなったりするから、この際「やっぱりどうしても裏面白紙のまま捨てるに忍びないとっておく紙」と「もういい加減見切りをつけ裏面白紙のまま捨ててしまうべき紙」とに仕分けをし、一気に処分してしまうことにしたのだった。

自ら立案したCMの企画に改めて見入り、いわゆる "引っ越し時の古新聞" のごとき片付けにならなくなってしまう状態には一切陥らなかったけれど、ここに驚愕のとんでもないプリント紙を発掘してしまい、せっかくのことだからブログに早速発表してみようかというのが本日の眼目なのだ、"せっかくのことだから" というのも意味不明だが。

まずはスキャンした画像をご覧いただきたい。10年前とは言わないまでも、7.8年は確実に過ぎているであろう以前確かに手がけた仕事なので、ここではあえて企業名は伏せずにお見せしようと思う。私がこの仕事にたずさわったことがここに公表されることでなにか支障を来すとは思えないし、企業名が明確である方が "とんでもなさ" がよりリアルに伝わるだろう。

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いかがだろうか。もしかしたら同じ業界の人でなければこの一日の余裕もなく詰め込まれたスケジュールの異常っぷりは伝わらないのかもしれない。
「毎日仕事があって当たり前。土日が仕事でつぶれることもさのみ珍しいことではない」などと言われてしまってはこれをアップロードまでした甲斐がないというものだが、もしかしたら大方の人がそう思われるかもしれない。
これがとんでもなく濃厚なスケジュールであることを、この業界に明るくない方々にうまく伝えられないのはもどかしい限りだが、どうにか少しだけでも大変さを補足的に説明してみようかと思う。

果たしてこれが何年何月のことなのかはもはや確認しようがないのだが、とある年のとある月末29日から翌月いっぱい、おおよそ1ヵ月分の、自分のためだけの確認用にタイプアップしたスケジュール表である。
ちなみに31日から翌月4日までつづくキリンの撮影とは、首が異常に長いことで知られアフリカに生息している動物のキリンを撮影したのではないと一応はおことわりしておこう。

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※ これが首が異常に長いことで知られアフリカに生息している動物のキリンだ。

その動物ではないキリンの5日間におよぶ撮影が終わったかに思われた翌日には同じ案件のロケハンが組まれているという不自然さは、スケジュールを下った12.13日に再びキリンの撮影が再開されることで納得できる。そのためだったロケハンが5日、翌6日には5日間撮影分OKテイク出しを休む暇なく行い、次の日今度は別案件ダイエーの撮影、仮編集、本編とMA(マルチオーディオ・レコーディングの略で、ナレーションと音楽、SEという音全般のすべてがダビングされて、基本的にはここに映像は完成することになる)を立て続けて行っている。翌10日、ついに3案件目全薬の実制作がスタート。11日の(予)とは、天気予備日のことで、つまりここから全薬工業の撮影がロケーションであったことがわかるが、果たして10日が晴れたのか曇ったのか、天気予備日を使ったのか使わなかったのかは今や知る由もない。さて12日には再び首が異常に長いことで知られる動物のキリンではないキリンの撮影が2日再開され、首が異常に長いことで知られる動物のキリンではないキリンの撮影終わりに間髪入れず編集までその日のうちに行っている。書いているだけでもう目が回りそうだ。その翌日には首が異常に長いことで知られる動物のキリンではないキリンにその映像を試写し、その試写終わりで3案件目全薬の仮編集がスタート、2日の仮編集の後には試写を敢行、そして全薬の本編集が2日あったのち、首が異常に長いことで知られる動物のキリンではないキリンの編集を2日で仕上げ、21日には3案件目全薬の仕上げMAを終えて、残る案件首が異常に長いことで知られる動物のキリンではないキリンのMAが、突然ぽっかり8日間空いて行われている。…と、説明のつもりがこっちまでなにがなにやらわやくちゃだ。

この月撮影日数は10日間もあり、それだけならまだしも、3案件の仮編集、編集、MAをこなしている。つまり3つの仕事をキワキワのスケジューリングでなんとかやりくりをし、わずか一月の間にすべてまとめて仕上げてしまっているのだから、一歩間違えばこれら3つの案件が総崩れになりかねない、異例でありかつ異常な事態であったと、さすがにこれを見たときは片付けの作業は一時中断せざるをえなかったものだ。

通常であるならば、淡々と手帳に記しているだろうスケジュールを、改めてこうして一月間を一覧しないことには自分でも数日先がどうなっているのかよくわからなくなっているプチパニック状態がこのプリントからは伺い知れる。

それにしても、と思う。これは果たして本当に自分がリアルにこなした一ヵ月のスケジュールなのだろうか。
「こんなに過密なスケジュールだったらいいのにな」たとえばこんな精神状態は自分になかったか。
いやこれがもし私の思い描いた妄想スケジュール表であったちとしたら、むしろそっちの方が異常である。

ごっそり紙は処分した。嵩はいま床から13cmである。

by wtaiken | 2013-11-04 16:49 | ああ、監督人生 

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