果たして大変お世話になりましたのか?   

春の京都三条大橋から出発し日本海側へと抜けて北上しつつ、視聴者から寄せられたハガキをもとに心の中に残る風景を自転車で尋ねるという、週に4日走らせての10週間、すなわち40日間かけて北海道へと向かったNHK-BSプレミアムの旅番組「にっぽん縦断こころ旅」が、今度は秋の兵庫県から下って再び40日をかけ鹿児島県の南端を目指している、今その旅の途上にあるのが、若い頃には稀代の女ったらしで鳴らした火野正平で、とにかくこの番組が面白いのは、自転車の受ける風を感じながら、決して観光地では見られないだろう素朴で朴訥な日本の景色をたくさん見ることができることと、さらにそれに輪をかけ私を魅了するのは、あるものに言わせれば女ばかりか男もコロリといってしまう、つまり”人ったらし”火野正平の、土地土地の人たちとはかるコミュニケーションや、まるで子供のように無邪気な素行の楽しさだ。
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目的地に到着すると「とうちゃこー!」と叫び、なにか意外なものに出くわした時には「こんなん出ましたけど…」とつぶやき、のぼり坂を走っているときには「がんばれ、正チャン!」と自らを励まし、道端のたんぽぽの綿帽子を「がじゃーがじゃー」などと奇声を発しては手でめちゃめちゃにかきまわし迷惑なくらい種を宙空に飛ばすなどなど挙げればキリのない奔放な発言や行動は、30年以上も前のテレビドラマ、山崎努、藤田まことを双頭にして丁々発止のアドリブ合戦が下手なコメディーなんかよりも数段笑える、ともすると悪ノリが過ぎて、本来ならば弱者らの復讐のドラマのはずがまるで緊張感に欠けるといった批判をコアなファンから受けたりしながらも、それでもシリーズの最高傑作として揺るぎない「新・必殺仕置人」における”情報屋正八”のキャラそのままに思えてしまうのだ。
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左右の端っこにいるのは殺しの元締めとその用心棒。残るメンバーの左から藤田まこと、山崎努、中村嘉葎雄に、かわいらしさ炸裂の若き火野正平。それにここには写っていない中尾ミエを含めた「仲良し5人組(劇中のセリフより)」のアンサンブル演技はシリーズ中でも白眉。

いつまで経っても見慣れない今のスキンヘッドもニット帽を被ってしまえば若々しく、まるで昔の火野正平、というかまさにその「正八が帰ってきたー!」といった感覚で、記念すべき春の旅、第一回目の京都ではちょっと寄り道して太秦撮影所を尋ね、いかにも小うるさそうな職人気質の大ベテランスタッフたちに大歓迎されるといったくだりでは、誰にでも愛されてしまう火野正平という人物がしのばれた、あの頃の必殺シリーズファンにとってはとてもうれしいシーンだった。

おそらく大絶賛オンエア中のはずの秋の旅はまだまだこれからも続くので、火野正平の愛嬌ある人柄に触れるのもよし、また旅への郷愁をかき立てられるのもよし、是非ご覧いただきたい番組なわけなのだが、ここまで長々書いておいて、実は今日は火野正平のことを書きたかったわけではないのだ。

その「新・必殺仕置人」あたりの頃の、前髪を下ろしていた若き日の火野正平を彷彿とさせるのが、「ゴールデンスランバー」でのキルオや、同じ中村義洋監督の「アヒルと鴨のコインロッカー」が印象的だった濱田岳で、顔つきもさることながら、あの何をしても憎めない、そして母性本能をくすぐりそうなキャラクターは、実のところ火野正平の隠し子なんじゃねーかと思えるほどよく似ていて、今のジャニーズ御用達番組と化していなければ、是非とも新しい必殺仕事人シリーズの情報屋として出演してもらいたいものだが、今日はその濱田岳のことを語りたいわけでもない。
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これが火野正平のレコードジャケット写真で
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そしてこれが濱田岳。似てるー

そんな濱田岳を経由するとやっぱり同じく「火野正平種」に属するだろう、たとえば火野正平を父として、濱田岳を”ちょっとやんちゃな弟”とするならば、なかなかしっかりしたお兄ちゃん的な感じのする、つまり今日話したかったのは、そんな浅利陽介についてなのだった。
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酒ばっかくらっている親父に、
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やんちゃ盛りの弟と
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学校の成績も抜群の、しっかりものの兄。
この3人に、血の流れを感じてしまうのは私だけか?


前々から火野正平と濱田岳に似てることで注目してなんとなく気になる役者だったし、出演しているドラマを観たことはほとんどないと思うが、顔立ちからいい感じのキャラクターの持ち主なんじゃないかと勝手に想像し、密かに応援している浅利陽介の所属している事務所の方から、思いもかけず先日突然メールが届いた。

このブログでは「会田犬」という、なにか「秋田犬」と勘違いされそうな名前を私は通しているが、もちろんメールの宛先には私の本名が書かれてい、本文をかいつまめば浅利陽介出演舞台の案内に添えて、挨拶にはこんなことが書かれていたから二度ビックリしてしまった。
「その節は、浅利陽介が大変お世話になりました」


私はドラマ業界に一切関わりはないが、映像の仕事のついているからにはどこかで会っているのかもしれないけれど、わざわざメールをいただくほどの”その節”とは一体どの節だったのか。一体どれくらい”大変”な、そしてどんな”お世話”を私がしたのか。まったく記憶にかけらもないのだ。
テレビのこちら側から一方的に応援はしているさ、けど大変なお世話など、この私が一体いつしたというんだ。

たしかに某ケータイ会社のウェブ用映像では、毎回100人ほどのモデル、タレントのたまごたちのオーディションをしているし、その中には、前出の「ゴールデンスランバー」でこれも脇ながらいい味を出しまくっていた運送会社のロックな先輩役渋川清彦もいたりした。とってもいい感じだったけど、個性的すぎてそのケータイ会社のイメージにはそぐわないということで泣く泣く落選だったけど、オーディションですらこうして覚えているということは、「大変お世話になりました」とお礼をいただけるほどの関わりを持ちつつもお世話したはずの当の私が忘れてしまうというのは、一体全体どうしたことだ。加齢による記憶障害では片付くまい。

私の中には私の知らないもう一人の私がいて、私の知らないうちに私の知らない仕事をしっかり受注し、私の知らない曜日にどこかの知らない撮影スタジオで、私の知らないマネージャーと名刺交換をし、テレビで見知る浅利陽介へは演出と演者の関係以上の、ひとかたならぬ、けれどもそれがどういった類いのものなのか私のまったく知らないお世話をして、のちのちメールで公演の案内をいただいき、今こうして途方に暮れているとでもいうのだろうか。なんとも不気味だ。

ちなみに浅利陽介出演の舞台「往転-オウテン」は、シアタートラムって知らない劇場で昨日よりはじまってます。
どら、観に行って、真相でも確かめてみるか。
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なぜか一切の関わりもないくせにチラシまで勝手に載せるという「往転-オウテン」の宣伝になってしまったな、今日の記事は...。

by wtaiken | 2011-11-07 17:10 | ああ、監督人生 

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