マイ・シネマ・ランキング2015・続々々   

さながら昨日などは、早合点した冬ごもりの虫が浮かれて地中から這い出しそうな気候の2月の半ばを迎えようというのに、いまだ2015年の話を引きずるのもどうかとは思うが、残すところ2作きりのことだし、このままワン・ツー・フィニッシュをうっちゃっておくのも気持ちが悪いので、案の定なんのヒネリもなく「マッドマックス / 怒りのデス・ロード」が年間ベスト1に輝いた月刊誌映画秘宝の後塵を拝する「マイ・シネマ・ランキング」の第2位から、ひさしぶりの更新をば。


第2位.
「アントマン」

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auの三太郎CMのかなり初期の段階から画面片隅に小さくひそかに登場していたらしき一寸法師じゃないけれど、"マーベル史上最小ヒーロー" と謳われた、人間を小さくし戦地へ送り込むことで世界状勢が一変するとされる特殊スーツの技術開発をめぐる争奪戦という「おいおいマジか」という荒唐無稽な "とんでも設定" さ具合といい、そういったバカバカしさも含めて、個人的には「こんぐらいな感じが実にマーベル」らしく思えて、たとえばこの映画の笑える部分の多くは、降板してしまったポリス・アクションと笑いのハイブリッドな傑作「ホット・ファズ」監督エドガー・ライトの置き土産だとする説があるようだけど、いずれにせよ出来上がった映画は、ここ数年の「ダークナイト」後遺症的になんでもかんでもシリアスになりかけているスーパーヒーロー映画とは本来 "これくらいの軽いノリ" というか「こういう方向もそもそもあったんじゃないか」な指針を示してくれた、結構カジュアルに鑑賞できる、私としてはマーベル・ヒーロー映画の中でも上位に位置するくらいお気に入りになった、この作品がよもやの第2位にランキングです。

正直とてもかっこいいとは言いがたいスーツ造形だし、主演俳優も私にはほとんど縁のない人だし、監督も知らないしだし、DVDスルーどころかまるで観る気がなかったところ、本国アメリカでの公開後の作品評価がまずまずで、さらに後押しされたのがラジオ番組「ウィークエンド・シャッフル」におけるライム・スター宇多丸の上々な評価。どれ、てな具合に観にいって正解だった。
主役のアントマン演じるポール・ラッドも好感だし、なにせマイケル・ペーニャ筆頭のケイパー・グルーブが最高! で、その中のキモオタなハッカーを演じているのが、「ダークナイト」でジョーカーに心酔し市長暗殺一味に加わる偽警官シフ・トーマス役だったデヴィット・ダストマルチャン。ヒュー・ジャックマン主演の「プリズナーズ」でもかなり危ないロリコンな容疑者役だったし、今回もまあいうなれば "そっち系" として同類ながらも「いいやつ」な役どころでよかったよかった。

ちなみに私の動体視力が確かならば、敵役のイエロー・ジャケットの研究所にアントマンが侵入したラストの攻防戦で、構えた拳銃のその銃口を伝ってきたアントマンのキック一発で倒される警備員のひとりが、「ダークナイト・ライジング」で、バットポッドに乗って登場したバットマンの構える「E.M.Pブラスター」を撃ち抜いてしまい、思わず「すいません」と口走る警官役の人だったと思うのだが...定かではない。


第1位.
「バードマン あるいは(無知がもちらす予期せぬ奇跡)」

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個人的には2015年はこの映画に尽きたな。嫌いな人にとっては「なにか意味ありげに、如何にも高尚な "フリ" をしている感じ」が嫌味ととられるようだし、映画全編をワンカット演出にする意味がわからん! だとか、「なに嘘でしょ、これがアカデミー作品賞?」なんて評価も散見されるが。
いやいやいや、ワンカット演出に意味なんてなくていいし! (もちろん疑似ワンカットだけど) そりゃ監督としてはキチッと理詰めでこの手法をとったとは思うけど、一昨年だったか世の中的には高評価だった「ゼロ・グラビティ」で冒頭30分のワンカット演出に「もしやこの宇宙漂流物語の地球生還までをワンカットで押し切るつもりだったらこりゃとんでも傑作になるぞ」と期待した分、結局途中でカットを割った途端に勝手に「裏切られた!」とばかりに評価ががた落ちしたこともあったから、今回のこそは! のチャレンジに「いいぞ、もっとやれ」と心底拍手喝采でした。観ている間にいちいち意味なんて求めないし。←ちなみに「ゼロ・グラビティ」もこの「バードマン」も撮影はともにエマニュエル・ルベツキで、アカデミー撮影賞はこの2作で2年連続の快挙! それとワンカット演出で有名なのは、ヒッチコックの「ロープ」。この作品では棺のフタの開閉でブラックアウトさせ如何にもワンカットに見せている

逆にこれがアカデミー賞穫ったところがすごいと思うし、ドラムのリズムで押し切る音楽の演出も最高でした。

これまでの監督作に特に見るべきものを感じなかったアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督は、この1作で突如覚醒したというか一皮も二皮もむけたというか、これつくったたった2年後に、日本公開の待たれる「レヴェナント : 蘇えりし者」だっつーんだから、ちょっとすごくね?て感じです。ともすると監督賞で史上初の2年連続オスカーなんてこともあるやもしれず。
それにしても憶えづらい名前だなあ、映画の話するにも「ほら、あの、バードマンの監督の、えー、イリャニ? イャニィ?とかなんとかいう監督の、ほら!」っつって、言い当てられた試しがない。


とまあ、私の2015年はこんな感じでしたよ。

逆にワーストは1位だけ特に記しておくと、そりゃもう断トツで「進撃の巨人」!
オンラインのレビューで「くそです!」なんて下品な評価も多くあるけど、汚い言葉は使いたくない私としての一言評価は「噴飯ものです」でした。

なにが最悪かって、演出のすべて! とにかくいい悪いの判断のできない、判断のできないそのままを丸投げしてくる希有な作品というか。
叫んだら巨人が気づくんじゃねえのなんていう設定もどうにもいいように解釈してなのか力んで叫ぶしか能のないバカな演技を延々と聴かされる特に続編、背負い投げのシーンを筆頭に見ていて恥ずかしくなる演出、そりゃ人類の工業技術がストップした未来の話とはいえ平気で現存するアップルのリモコンそのまま画面に大写しするそのセンス...挙げればキリがないし、クサした評価はいくらでも読めると思うのでもう繰り返さないけど、こんな人が監督ならば新しいゴジラもたかが知れたな、と。せめて総監督庵野の良心で、なんとか持ち直してほしいけど。

最後に一言。「進撃の巨人」といいながらも、中型巨人が日向ぼっこしてるシーンでしか終盤まで出てこないなんてそんなバカな、な読編が特にひどい! ダメ、観ちゃゼッタイ! 久々の1作。

by wtaiken | 2016-02-14 04:52 | なんでもベスト10

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