マイ・シネマ・ランキング2015   

今日は一切の枕なし、単刀直入に本日は本題へと突入しようかと。
本来?ならば、去年1年間に劇場で観た映画短評をすべて書き終えてからのトップ10発表という段取りのつもりだったけれど、その流れだと年間評でさんざん誉めちぎった映画がわかりやすく順当に10位内に入ってくるだろう予定調和を回避する意味で、また映画館で観た映画を順繰りに評価しているうちにきっと飽きて中途で投げ出してしまうだろう堪え性のなさからも、当初のあとさきを変更し、「2015年に私はこんな映画が気に入っていたのだなあ...」と老後しみじみと縁側で茶でも啜りながら述懐するため、今日ここに、主に自分のために、もしなんならこれを読まれて今後の映画鑑賞の一助にでもついでになればと、記録として残すものなのである。


さて昨年私がすべての鑑賞メディアにおいて観た映画の総数は291本で、内訳は映画館鑑賞が36本、残りはほぼ自宅視聴により、そして海外へ移動中の機内ビジョンという劣悪な環境下での視聴もわずかながら7本ある。さらに291本中、初見の映画は226本で、残りは毎年のように決まって必ず観ている映画、たとえば「天国と地獄」を筆頭とした黒澤映画、少しずつ4Kリマスター化されつつある小津映画、ウディ・アレンもの、「ダークナイト・トリロジー」を主としたクリストファー・ノーラン作品などなど、再視聴ものが今年は65本もあった。これにはどうも精神的な理由らしきものがあって、つまりたびたび書いているように去年は春と夏に大きな仕事の山が2つあり、その繁忙期の合間にぽつりとできた寸暇にこそ映画がどうしても観たくなるもので、そんなとき「これは間違いない!」というテッパン作品にすがりつく機会が多かったというわけ。

そんな新旧入り混じった291本の映画の中から、ランキング好きの私がトップ10を選んだわけですが、もちろん評価の定まっている再視聴作品は含まれません。て、そりゃそうだよ、それを入れ出したら毎年トップ10の作品が同じ並びになってしまうからね。

てなわけで、もったいつけるつもりはないけれど、早速第10位からはじめよう。

第10位.
「ジュラシック・ワールド」
「ジャージー・ボーイズ」
「インサイド・ヘッド」


いきなり掟破りな同率で10位が3本! て、掟もなにもない無法なランキングなので、つまり1位から順に選んでいっての最後の10本目がどうにも決めかね、決定打の見いだせないままに...という理由による。
1本ずつ手短に行きましょう。


「ジュラシック・ワールド」
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このシリーズは、第1作目からなんら変わりばえのないお決まりパターンのストーリーなので、そこに新鮮味はまったくない既視感だし、改めてスピルバーグによる、登場感をあおる、恐怖心を高めるなど演出の的確さを (つまりこの映画では、そこがなっていないから)再認識させられたり、檻から逃げ出すためにとんでもないIQを示した遺伝子操作による新種の恐竜が、逃げ出してみたら頭の良さは微塵も発揮せずに、結局は単に凶暴性を発揮するに止まる肩すかしっぷりだったり、その恐竜のハイブリッドにしても、都合よく「実はこんな動物の遺伝子も組み合わせていたかー」な後出しジャンケンだったり...と、こう思いつくままに書いていると、とても "トップ10" に選んだ作品とも思えない評価になるんだけど、唯一のベネフィットが私的にはかなりツボだったという理由でこの位置なのだ。
それは、「ジュラシック・パーク」に笑いの要素を付加してみたら、こんな映画になりました、という点。それだけ読むと、なんだかトンデモ映画と思われるかもしれないけど、実は恐怖と笑いとは裏腹、緊張感を高めれば高めるほど笑いにもつながりやすいということ。まあこの緊張感とは主に登場人物に課せられたもので、そこは前述の通り観ている側には弱いところもあるんだけど、こと笑いに関しては、セリフはもちろんのこと、人物の表情だったり、間だったりが適切だったと思う。
もう「龍三と七人の子分たち」とは比較にならないくらい笑いましたよ、って、本当に北野武監督は笑わせようとする映画はダメだなー。
話は傍流に逸れたけど、全体を包むスピルバーグ「ジュラシック・パーク」愛と、やっぱりティラノザウルスサイコー演出も加点。

公開時に劇場で視聴。そりゃやっぱりこの映画は映画館で観ないとね。


「ジャージー・ボーイズ」
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「君の瞳に恋してる」。これはかつて所属していた劇団の、カーテン・コールに必ずかけていた曲で、少しばかりの甘酸っぱさを伴いつつも格別に思い入れがある曲なのだ。格別に思い入れながらもそれがボーイズ・タウン・ギャングのオリジナル曲なんだと、この映画までそう思って疑わなかったという音楽知識の無学さはさておき、オリジンたるフォー・シーズンズのメンバーたちの、基はミュージカル作品による夢と挫折の物語を、堅実な手腕で映画化してみせるクリント・イーストウッドの、最後の最後、出演者すべてを登場させ歌って踊らせるカーテン・コールという、愛情溢れるサービス精神に感服。もちろんその中にはあの強面のクリストファー・ウォーケンも含まれ、さらには60年代という時代設定に見事に則したカタチで出演しているクリント・イーストウッドも舞台裏では踊りを習いかけ...と残念ながら「やめとくよ」とばかりに引っ込んじゃうんだけど、監督自らもこのカーテン・コールに出ていたら、もっと上位だったかも。
公開は1昨年前の2014年。レンタルDVDで視聴。
ちなみに「君の瞳に恋してる」のマイ・ベスト・カバー曲は、もちろん前述のボーイズタウン・ギャングにほかならないが、次点は椎名林檎のだったりします。


「インサイド・ヘッド」

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人の心情を左右する、頭の中の5つの感情。少女が成長していく過程で、幸せを願う5つの感情が衝突して頭の中はパニックに。当然少女は荒れて...みたいな話は机上の論理でなら成立できても、そこからエンターティメント作品に昇華させるのはなまなかな才能では無理なところを、見事にやってのけてしまうピクサーの底力。しかも思い出の島が倒壊していくさまは、取り返しのつかない感をすばらしいアニメーションで表現している。そしてなによりも感動的なのが、人は大切な何かを捨てていきながら成長していくということを気づかせてくれるシーンで、わかっちゃいるけど、もう条件反射で滂沱の涙。そういや「インターステラー」の運動の第三法則でも泣いているという、弱いんだな、このテーマに。
頻繁に覗くYahoo!映画のユーザー・レビューの点数は思いのほか低いが、いやあよくできているよ。
これはレンタルで自宅視聴。だからこそ思いっきり泣けたのかも。


第9位.
「自由の幻想」

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映画館で観た映画が多かったことに比例して、このトップ10もおおむねが劇場公開の新作映画になってしまった。このあとのランキングのネタバレにもなるけれど、実はそれが今年の傾向。
で、数少ない旧作の1本がこれ。今年はルイス・ブニュエルのプチ・ブーム到来で、一時期一気に貪るように観たのだ。傑作揃いだと言われているブニュエルのフェチシズム炸裂なメキシコ時代の作品もいいが、晩年フランスに戻っての諸作も捨てがたい。その中でも「自由の幻想」が傑作だろうと。
いきなりが「新春スター隠し芸大会」のハナ肇の元ネタかよ!の銅像が動き出して人を叩くというギャグにはじまり、とにかく終始くだらない、ときに意味不明かつシュールな笑いが満載のこの映画。これってかなりモンティ・パイソンが影響を受けているはずだよ。


第8位.
「EX MACHINA」

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"EX MACHINA" で検索するとヒットする、2007年公開のアニメ作品が第8位、ではない。今年公開の、なにせ「スター・ウォーズ / フォースの覚醒」出演組のドーナル・グリーソンとオスカー・アイザックが出演しているし、作品的にも評価が高いことからも日本でも単館ながらも即公開されるだろうと踏んでいたのに、焦らしに焦らされなかなか公開されずに今に至る、人工知能 A.I. を扱った、スリリングで不気味なSF映画が第8位なんでR。って、なんでまた突如嵐山調?
なにはさておき特筆すべきは、広告ビジュアル面を一手に担う A.I. エヴァを演じる、アリシア・ヴィカンダーともアリシア・ヴィキャンデルとも表記され、いまだ日本語的にどう扱うか定まっていないほどの、つまり今年突如新星のごとく現れては「コードネームU.N.C.L.E.」でもキュートさを発揮し、さらに「リリーのすべて」ではアカデミー助演女優に選出をされ、さらにジェイソン・ボーンシリーズの最新作に出演も決定、もしかしたら早くもリブートされる「ドラゴン・タトゥーの女」でリスベットを演じることになるかもしれない、今とこれから特に話題になるだろう彼女の、むしろこのスキン・ヘッドの方がかわいいのではないかと思えてしまうほどの魅力に尽きる映画だ、って長いよ!
A.I. の造形物としては、ビヨークの「All Is Full of Love」PVに出てくるアンドロイド以来の出来栄えだったと思うし、そんなにキュートでセクシーなドロイドが目の前にいれば、いくら技術の発展した未来だろうと、というか、いつの世でもかわいい女性の前では男は誰しもが愚かしくなる、という映画。

欧米諸国では春先に公開し秋口にソフトが発売されたので、日本公開に期待せず速攻日本語字幕付き版をゲット & 視聴。私が購入したこの ↓ スチール・ブック仕様ははもうAmazon.co.jpでの取扱はないみたい。残念ながら。
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日本公開を切に願いましょう。

by wtaiken | 2016-01-18 00:44 | なんでもベスト10

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