2014サマームービー総括   

映画評はライムスター宇多丸に任せとけ。そう思わずにいられないのがTBSラジオ「ウィークエンド・シャッフル」内での30〜40分のコーナー「週間映画時評ムービーウォッチメン」 (前身は同番組「ザ・シネマハスラー」) で、早口に捲し上げ、好きなシーンに対し「いいですかみなさん!このシーンだけで5億点ですよ!5億点!」と必要以上に "5億点" を連呼する物言い、口調に好き嫌いは大いに分かれるところだと思うが、毎週公開される映画5本 (この5本の選出基準は示されていない) から、シャッフルされた "ムービーガチャマシーン" と呼ばれる機器より不作為に取り出された1本を、好むと好まざるとに関わらず論じなければならないというルールーのもと、たとえば不出来な映画であっても最低2度は劇場に足を運び、観ていない同監督作品あらば過去作を遡り、さらにパンフレットは言うまでもなく参考文献までをも漁り、そうした下準備を毎週行い、自らの映画文法に沿ってどこがどうダメなのか、また絶賛を送る場合も同様に具体的にポイントを絞り論じるという宇多丸の映画評論に向かう姿勢は、表層的なことでしか評せない、名ばかりの凡百評論家らは足元にも及ばないだろうと思っている。
このコーナーでことに痛快だったのは、表立って酷評された文章を (あまり映画評を頼らない私は) 知らないテレビ局主導の、さして視聴率が高くもなかっただろうに映画化された、あるいはジャニタレ主演作やなんの実績もない吉本芸人ら監督作に対して歯に衣着せぬ容赦ない評価を断じる回で、たとえば「20世紀少年」だとか、「踊る大捜査線」だとか、「怪物くん」や三谷幸喜諸作、松本人志、キム兄、品庄・品川監督作あたりのぶっちぎりな酷評っぷりは本当に溜飲が下がるので、上記作を観て「なんでこんな映画が当たるんだ」とか、あまりのつまらないさにモヤモヤした気持ちを抱いたままどこへも発散できなかった方は、是非YouTubeあたりで「宇多丸」と上記作品名を検索窓に打ち込んでみていただきたい。

と、なにもここで宇多丸映画評をオススメばかりしてもいられない。上述の通り、そのコーナーで選ばれる映画は建前上は無作為なので、映画すべてを網羅し論じているわけではもちろんないのだから。
なので、及ばずながら、というか8月の末日なので "遅まきながら" と言った方が適切な、2014年夏に公開された映画の中から、どうしても外せなかった7本 (たったの!) を、いたって簡潔に、一言、二言、三言四言五言くらいで、なるべくテンポよく評してみたい。
ずいぶんと前に公開され、早くもレンタル屋に並んでいる作品も含む。



アメイジング・スパイダーマン2
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2014年のサマームービーの先陣を切って...たってずいぶんと早々と、日本は時差の関係上「世界最速」の4月25日公開だったので、もうレンタルに並んでいるこの作品をいまさら評したところでって感じですが...。

端的に言うと、前サム・ライミ版から一転して、ずいぶんと "今風" なアンドリュー・ガーフィールドとエマ・ストーンという若き2人を主役にし、「(500)日のサマー」という傑作をものしたマーク・ウェブを監督に起用した意味がようやく2作目で明確にされた、ということです。
つまり他のスーパーヒーローものにはできないことがこの作品には表現されているわけで、それがいわゆる「青春」というやつ。このスーパーヒーローの「青春」期における甘酸っぱい苦悩をこそ、前3部作より強く打ち出すことが本来リブートする意味であり (と私は感じた)、そのあたりが立ち上げでいろいろ詰め込みすぎて焦点の定まらない前作から、明瞭に観えてきた評価すべきところだと思う。
「恋愛と (世界を救うという) 仕事とどっちをとるか」で苦悩するスーパーヒーローなんて、クラーク・ケントにもトニースタークにも表現できない。ちょっとだけノーランのブルース・ウェインにはそんなうじうじしたところがあったけど。

一方、この評価できる恋愛映画としての側面に対し、本来ならばこちらが本筋たるヴィランとの対決面が相変わらずCG頼りの大味な表現にとどまってしまい、設定までも主役二人同様に「愛する人 (信じる人) の喪失」をテーマにしているようでは、悪役としての動機づけがあまりにも弱すぎる。そのうえエレクトロもグリーン・ゴブリンも造形的にカッコ良くないんだもの! ここかなり重要でしょ! デイン・デハーン、グリーン・ゴブリンになる前の方がぜんぜんいいし!

よってマーク・ウェブの本領を発揮した主役二人のラブラブなシーンはここぞと瑞々しく表現され、逆にメインのヴィラン2人がお粗末な描かれ方になってしまい、胸のすくアクションシーンが観たいアメコミファンあたりからは「そんな二人の恋愛描写はいいから!」などと酷評されてしまうのはむしろ当たり前かと。

マーク・ウェブらしさが出たところは「それそれっ、それを観たかったんだからぁ!」の高評価で満点の☆5つ。でもすべてにおいてヴィランが魅力的でなかったのでマイナス☆1つ。で、総合☆4つ、と。
なんだかんだいって個人的には1作目なんかより断然満足できましたよ、実生活でもラブラブな二人の「甘〜い」シーンを延々観せられるのもふと「なんだかなー」なんてやっかんだりもしますが。

そんな私の評価に反して世界的にこの作品は「NO!」と否定され、予想を下回る興行成績だったらしく、つまり今度のリブートの狙い自体が否定されとするならば、やはりマーク・ウェブはこのプロジェクトからさっさと離脱して、早く本来の、本領発揮できる映画に着手すべきと思う。ビッグバジェットなんかじゃないところでね。

あ、そうそう、それと評価すべきところをもうひとつ。
ラストの、スパイダーマンの格好をした子供を救うところ。お約束だし、わかっちゃいるけど、こうしたヒーロー然とした救出シーンは○必ですよね、やはり。

そういったシーンのなかった「マン・オブ・スチール」はだからダメだと思うし、飛行機から空中に散り散りに投げ出された13人を一人で見事に全員救ってみせる「アイアンマン3」はだからいいのです。余談ですが。(←この意見、まったく宇多丸氏の映画評と一致しています。なんか最近聴いたから付和雷同して...なんて思われると業腹だけど)



X-MEN : フューチャー & パスト
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これまた私の評価とは真反対に、アメリカの評論家筋からは絶大な支持を受け、観客からも高い評価を得、そして宇多丸氏もまた私の大嫌いな前作「X-MEN : ファースト・ジェネレーション」ともども賛辞を送って止まないわけだが、ちなみに「この映画は如何なものか」と疑問を呈した記事はこちらで、「観ちゃ、ダメ、ゼッタイ!」という表題は少々言いすぎ、というか記事は続いて論じるつもりの、とある別映画に向けたものだったのだが。

ここで改めてその記事をかいつまむと、ミュータントにとっての歴史の分岐点がある特定の日とされてい、しかも元凶となる "ミスティーク" レンヴンの行為すら歴然としているので、「よし、歴史を遡ってそれを食い止めろ」だなんて、そんなわかりやすいミッションの一体どこを楽しめばいいのか、という主に脚本の問題点を適確についたつもりの記事だったわけだが、ほかにもたとえばそのレンヴンの行為を阻止するためのマグニートが放つ銃弾に、負傷したレイヴンの足から滴る血が結局ロボットの進化を推進してしまうという、映画で語られるストーリー前と後では、そこに至る過程こそ違えど結果が同じだったというなんだか間抜けな展開や、そもそも人間のDNAをとりこんで進化するロボットという飛躍のし過ぎな設定にも唖然とするし、「...ファースト・ジェネレーション」同様プロフェッサーとマグニートの対立構造がどうも判然としないところが一番のもやもやポイントだったりし、一体全体この作品を評価するものたちはこのあたりをどう観たんだろうか。

ブライアン・シンガーの演出が冴えた頃からするとあまりにも平板で、評すべきはクイック・シルバーの厨房シーン唯の1つきり、ということで、限りなく☆2つに近い☆3つというのが私の評価。



300〈スリーハンドレッド〉〜帝国の進撃〜
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アクションのスピードに緩急をつける、つまりスローから一気にクイックへと可変させるアクションは、2000年前後にガイ・リッチーをはじめ音楽プロモ出身監督らがよく使っていた手だが、前作「300〈スリーハンドレッド〉」のジェラルド・バトラー演じるスパルタがペルシア帝国に服従を求める使者を井戸へと蹴り落すシーンにおけるギミックで一気に世の中に広まり、監督ザック・スナイダーを一躍キャリアアップさせたうえ、彼の代名詞的手法ともなって、以降「ウォッチメン」「サッカーパンチ」 (邦題「エンジェル・ウォーズ」が嫌いなので、原題で記す) では頻々と多用され過ぎの感があったところ、最近作「マン・オブ・スチール」ではいきなりの禁じ手とした、なんて余談から入る、「なんで今頃...」の7年ぶりの続編ということになる。

バットマンとスーパーマンを戦わせることに暇ないザック・スナイダーに替わり、本作ではノーム・ムーロという、なんだか "上から読んでも下から読んでも山本山" みたいな名前の監督にバトンタッチされ、それでも例の可変手法は健在、久しぶりに観る その "ちょっと前によく観たアクション" をこうも堂々使われてしまうと、それはそれで十分楽しめるわけだが、今作はそこに稲光を絡ませるという工夫をプラスしている。

それにしてもよりによって、数あるブロッグバスターの中から今更感濃厚なこの続編を観ることにしたのか、有り体に言えばそれはもう上に掲載のポスターの主、今作の主役ともいえるアルテミシアを演じるエヴァ・グリーンだけを観んがために、というわけで。

これまでもエヴア・グリーンは、たびたびスレンダーな割に豊満な肢体をスクリーンに晒してきたわけで、近作では2009年の「汚れなき情事」、2011年ユアン.マクレガー主演「パーフェクト・センス」なんてのもあったけれど、なんといっても鮮烈なスクリーンデビュー作、2003年ベルナルド・ベルトルッチ監督の「ドリーマーズ」におけるエヴァの奔放なヌードこそは、映画史上に燦然と輝くもっとも美しいヌードだと思っているくらいなのだが、だからといって巨大スクリーンの3Dでエヴァのヌードが観られる機会なんて今後そうもなかろうと、ただもうそれだけが目当てだったので、もう映画がどうしたこうしたなんてどうでもよかったのだったが、それにしてもなんとまあ薄っぺらな映画なんでしょうか。

もうひと山ふた山あってもいいくらいのあっけないストーリーだったし、さすがにエヴァもデビューから10年経てばカラダのラインも...という感じで、だったら男勝りなアルテミシアの残虐非道な悪女っぷりに期待したんだけど、それもはじめの方に自ら切り落とした生首に接吻する「サロメ」まんまのシーンがあるくらいなもので、キャラクターとしても肩すかしを食らった感じ。

まあほとんど観るべきところのない、どうしてこんな続編にGOサインが出たのか、創ったことが意味不明な残念な作品。☆2つ。

ちなみに次なる「なんで今頃...」作品、前作から9年ぶりの「シン・シティ」続編にもエヴァ・グリーンが出演してます。
「なんで今頃...」請負人と化しているエヴァですが、先週末に公開されたアメリカで大コケ。日本公開未定。

それと、当ブログにて、「ドリーマーズ」のエヴァ・グリーンが1位確定済みの、映画におけるオールタイム・ベストヌード10選をいずれお届け予定です。

by wtaiken | 2014-08-31 03:42

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