「目指せ、針すなお!…」嫌われる女篇   

先日昼時に「笑っていいとも!」をぼんやり観ていたら、火曜レギュラーのローラに突如ピン!ひらめくものを感じ、矢も楯もたまらず持っていた箸をペンに替え、最中の食事をうっちゃり似顔絵描きに突入したのだった。

もとはといえば、テレビドラマ「江戸川乱歩の美女シリーズ」をレンタルDVDで立て続けに視聴しているとき、ちょっとしたダレ場に手もとにあったペンで明智小五郎演じる天知茂の顔を戯れに描いてみたら意外とうまいこといってしまったことがキッカケで、せっかくだから続けてみるかと、後づけで似顔絵描きの第一人者針すなおを目指すことにしたこのコーナーも不連続的に継続中の、今回が久方ぶりの4回目、きっかけの明智・天知茂から同シリーズの浪越警部・荒井注、いわずと知れた勝新太郎といえばお馴染み座頭市に続いて、これまでの格別濃い劇中キャラを描く系統からはかなり逸脱した、4人目にして初の女性タレントということに相成った。

それにしてもこれまでとは描く人物への思い入れが雲泥の差だ。
おそらくどこぞの雑誌モデル出身なんだろうくらい曖昧な認識と、なんとなく見知っていることといえば、キャリアの上下分け隔てなく自由奔放な発言を繰り返し、困惑する相手を尻目に勝手になんでもOKサインを出しては自己完結してしまう天然キャラというくらいのもの。なんでもどこかの機構によるアンケート調査結果によると「女性の嫌いな女性タレント」No.1だったらしいが、個人的には思い入れこそないものの、天然キャラと言われるあれはあれでかなり計算されたものであり、実は頭のキレる娘なんじゃなかろうかと常々評価しているのだ。
そのローラになぜか突然「お、似顔絵イケるかも!」という意味不明のひらめきを信じて描きはじめたラフスケッチ段階から、私が如何にして自分なりの完成型にたどり着いたのかを、今回からは順を追ってつぶさに見ていただこうかと思っている。

さてその前に、当似顔絵塾の、目指すべき到達点についてここに改めて言及しておこうかと思う。

駅前や路上に陣取るプロなのかセミプロなのか定かではない市井の似顔絵作家たちに多くありがちなのが、特徴をことさらオーバーにディフォルメする画風だ。
鼻がちょっと目立っていたり、唇が少しばかり分厚かったり、おでこが人並み外れて広かったりすると、ここぞとばかりにそれを強調し、スケッチブックからはみ出さんくらいに極端に描いてしまう手法だが、あれは私の目指すところではなく、むしろ対極にあるものだ。

また、線が多く、陰影もしっかりつけた、エアブラシなんかもふんだんに使っているような、写実性に富んだ肖像画風似顔絵もまた好みではなく、私の目指すところではない。

ではどういった表現がこの似顔絵塾の到達点なのか。
それはディフォルメやカリカチュアを控えめにした、ちょっとした特徴を少ない線でとらえてみせる、一筆書きのようにササッとサインペンでなぐり描いたくせに適確にその人のラインをとらえている、それこそ私の目指す手法であり、その手法を我がものにしたとき塾としての到達点を迎えるのだ。
つまり後づけだったにも関わらず、勝手にタイトルに冠した" 針すなお "は実に我ながらいい線を我ながらついていたのだった。
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※ 針すなお氏の描く王貞治だが、無駄な線のない、実に見事なタッチだ。

といったわけで、振り返ってみれば、前回の勝新as座頭市は大きく狙いからは外れているものだった。" 座頭市 "というキャラクターから劇画タッチを選択したのだったが、あれはちょっと描き込みすぎだ。完成としたあの画から、線をドンドンと引いていく作業をすべきであったなどと、形式上の猛省をしつつ、今回はなるべく目標へ向かい、線は少なめに行きたいとは思う。

それでは、まず「いいとも!」を見つつのラフスケッチから。初稿というやつだ。
なんといってもローラ似顔絵のポイントは「目」。ローラの目をどうとらえるか。イメージしたのはかつて夕方の再放送タイムに頻々とオンエアされていた" ロゼット洗顔パスタ "の目の巨大なシロ子さんクロ子さんだったのだが...。
ちなみにこれがロゼット洗顔パスタのイメージキャラ。噫、懐かしや。
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で、こっちがザクザクと描いたローラのラフスケッチだ。
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ひ、ひどいもんだよ、我ながら。不気味だし。さすがに昼食の片手間ラフスケッチだけあるし、イメージしたロゼットにもまったく似ていなかったし。
しかしこうして闇雲にポイントの目をオーバーめに描くことで問題点がハッキリした。
顔全体に対しどれくらいの比率で目を描くか、そしてそのカタチもまた重要であることがよくわかったのだ。

で、このラフスケッチをトレースし、捨てるべき線、残すべき線、新たに加える線などを整理した第2稿が、これである。
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もともとローラに悪感情はもっていないので、初稿より" かわいらしくしてみよう意識 "が働いているのは明らかだが、残念なことにこの段階でもひとつも似ていないところは致命的だ。誰だお前は、だ。

ローラというよりは、中川翔子にここから似せていく方が近い気もするが、さらにこれを下敷きにトレースし、やっぱりポイントの「目」に注力して描きあげた、これが第3稿である。
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ここで一気に寄せたな、と自分でも思う。ちょっと実年齢より若く見えてしまうのは、やはり目の大きさ加減だろうか。
その大きさはともかく3稿にして目のカタチがかなり似たと判断した私は、これを基に、口の大きさ、笑ったときに見える歯を見せるか見せないか、あるいは髪のボリューム感などなど、あれやこれやためつすがめつラインを引いてはホワイトを入れての微調整を繰り返し、ここにそれなりの納得をもって、今回はこの第3稿を似顔絵の完成型としたい。

2稿段階では、3稿で似るとは思ってもみなかった。
ちなみに果敢にもう一稿重ねてみたのだが、近づいた3稿からまたずいぶんと遠のいていってしまったのだった。難しいもんだよ、似顔絵は。その似なくなった第4稿は、公開しない。

by wtaiken | 2012-06-14 07:59 | 目指せ、針すなお!の似顔絵塾

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