犬の似顔絵塾 第一回目   

テレビから一切の”おっぱいポロリ”が見られなくなってどれくらいになるだろうか。

その昔のテレビでは、とても開放的に、そして健全に、あちこちでおっぱいはポロポロしていたものだ。
なんなら家族が食卓を囲でいた7時台から平然とおっぱいはポロリしていて、たとえばポロリすることこそが番組のアイデンティティーであった「オールスター水着運動会」。番組後半のクライマックスに用意された水中騎馬戦、騎馬のうえにまたがるお色気タレントらの、ハチマキを取るつもりが逆にビキニひっぱがされちゃいました体によるおっぱいポロリ。
8時台のドラマでなら、第一回目からそんなシーンのあったことが衝撃的だった「俺たちの旅」、ロッカールームで着替える体の、それをオメダが目撃する体の、金沢碧のおっぱいポロリ。
9時台、そこが舞台なんだから毎度おっぱいがポロッて当たり前の「時間ですよ」は言うに及ばず、その同じ久世光彦演出による10chのドラマ「あとは寝るだけ」における、それがまったく脱ぐことに必然性など微塵もなかった戸川純のおっぱいポロリ。
NHKだって負けちゃいられません。天才和田勉演出によるドラマ「ザ・商社」の、モデルから女優になりたて夏目雅子の、目の前の山崎努に見せる体の、おっぱいポロリ。
10時台にもなれば昔のテレビはほぼ大人に占有されるという暗黙の了解のもと、どのチャンネルもおっぱいは”ポロリ祭り”だ。「傷だらけの天使」は比較的おっぱいポロリ率の高いドラマだったが、第三話「ヌードダンサーに愛の炎を」の、日本人離れした中山麻理の豪快なおっぱいポロリ。それを私たち年代のものは、夕方4時台の再放送で目撃しているというのだから、おちおち部活なんてやってられっかという話だ。
もちろんおっぱいポロリはドラマに限ったことではない。「テレビ三面記事ウィークエンダー」再現ドラマでのおっぱいポロリ。「11PM」、「独占!男の時間」、もしかしたらこの番組がおっぱいポロリの断末魔だったのかもしれない「ギルガメッシュないと」…。

枚挙に暇がないとはこのことだ。テレビとはすなわち「おっぱいポロリを見るためのメディア」であったと言っても過言ではないいきおいだが、ああそうだそうだいけね、今日はただただおっぱいが頻々とポロポロしていた頃を懐かしもうという主旨で書き始めたのではなかった。

連続殺人事件の、次々殺される女性のほぼ100%が意味もなく脱がされおっぱいを露にしてしまうという、「おっぱいポロリを見たけりゃこのドラマを見ろ!」と言わんばかりの伝説の番組、天知茂演じる明智小五郎の眉間のしわが渓谷のように深かったテレビ朝日江戸川乱歩傑作ミステリーシリーズを、このところ私はレンタルでまとめて観ていて、というのもうちの近くのTSUTAYAが毎週水曜限定旧作レンタルオール100円なものだから、だったらこの機会にと、クレージー映画や座頭市シリーズなどなどまとめ視聴しているシリーズ物のひとつがこれで、これが改めて観ると、そもそもツッコミどころ満載のドラマであることを承知の上でも、あんまりといえばあんまりな驚愕シーンの連打に愕然としてしまうのだ。

昨日観たのは「緑衣の鬼」を原作としたシリーズ第四弾の「白い人魚の美女」。たとえばこんなシーンにまず驚かされる。
不気味な謎の人影に悩まされる夏純子演じる芳枝が、明智小五郎にこう言う。
「このいたずらは私に関係あるんでしょうか?」
と、明智小五郎は、一点の曇りのない真剣なまなざしでなんのてらいもなく言ってのけるのだ。
「そうかもしれません。美しい人というものは、知らず知らずのうちに罪をつくってしまうものですからね」
これだけでもかなり寒イボものなのに、しれっと女はこうくるのだ。
「まあ、こわい!」
女—!謙遜しろーっ! と、こんなノリは序の口なのだ。

これをきっかけに芳枝の周りでは、件のごとくおっぽいポロリ連続殺人事件がお決まりで勃発し、明智が提示したこの事件に関する「二つの不可解」と「五つの不可能」というものを、荒井注演じる浪越警部の手書きという体裁の紙が貼り出されるのだが、これがまたとんでもない代物で、なにがどう転んだらこんな間違いが平然と罷り通ってしまうのか、乱歩の考えたトリックよりむしろその撮影現場こそが摩訶不思議な、以下がそのままを書き写したものだ。
注目は「五つの不可能」の方で、すべてに主語が抜けているが、頭に「犯人は」とつけて読んでみていただきたい。

1. どおしてホテルの密室から芳枝さんとフロント係をのこして消えたか
2. どおして水族館のゆきどまりから消えたか
3. どおして芳枝さんを部屋から地下道え連れ出したか
4. どおして地下道から足跡をのこさずに脱出したか
5. どおして芳枝さんの部屋にしのびこんで日本刀で刺し逃げたか

3の「地下道え」にもビックリだが、なんなんだその「どおして」の乱れ打ちは!
書き起こした浪越警部がバカという設定なんだろうか。いやまさかの凡ミスだとしたら、ちょっとこれはレベルが低すぎて怖いくらいだ。
この「どうして」を「どおして」と書き損じていることに、監督以下スタッフ一同、キャスティングされた俳優らもなんの異議を唱えずに粛々と進んでしまう撮影現場。凄すぎだ。奇跡だ。面白すぎだ。
というわけで、これからもこのおっぱいポロリ乱歩シリーズはつぶさに観ていくつもりなので、爆笑シーン発見の際はここで報告予定だ。

って、これも本題ではなかった、いけね。
かれこれ休載中の「犬のまんが道」。4コマ漫画は、もちろんネタは湯水のように湧いて出るわけもなく、「よし4コマ漫画を考えるぞ」とスイッチをひねらないとはじまらないし、はじめたところで納得の4コマがすぐにできあがるわけもなく、そういったモチベーションに今まったくないのであれば、だったら漫画修行もそろそろ次のフェーズにシフトすればなにか違う景色が見えてくるかもしれず、というのは後づけで、このぶっとびおっぱいポロリドラマを視聴中「あれ、なんかこの天知茂、もしかしたらカンタンに描けるんじゃね」と思いついて即実行したら存外似てたので、だったらブログにアップだ。と、そんな経緯で、これからじゃあたまに似顔絵修行に励もうかなあと。
そんな感じの第一回目です。

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似顔絵とは、描く人が描かれる人をどう見たかだ。
天知茂の目に下にクマなどないが、ともすると頭脳明晰な正義の人にはまったく見えない悪人づらがポイントだと思った。それと"乗っけてる"としか思えない頭。
それにしても、葉巻くわえるし、美女となれば見境なく色目を使うというとんでもない明智小五郎像だが、生前の、乱歩の親友だった横溝正史はこのドラマをどう観たんだろうか。


補足情報として、最後にひとつ。
この「白い人魚の美女」17分51秒あたりに、「あれ?今の、それはそうだった?」ってくらい微妙な、だからこそ自然なのかもしれない天知茂の二度見が観られます。すっげーさりげないの。興味のある方は是非。

似顔絵塾、つづくよ。

■今日のYouTube教授trioライヴ■
「m.a.y. in the backyard」「self portrait」サイコーでしたな。改めて聴きたくてもCD持ってねーんだよな。いつかは「音楽図鑑」のリマスター盤、出してくれるのかなあ。「未来派野郎」もなあ。

by wtaiken | 2011-11-19 08:52 | 犬の似顔絵塾

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