ゴッサム冬物語   

盗まれた拳銃を捜し奔走する刑事三船敏郎が終始汗を拭いている姿が印象的な映画「野良犬」は真夏の物語であるが、実際にロケが行われたのは冬だったそうだ。確か。
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夏の設定なのになんでまたわざわざ正反対の寒い時期に撮影したのかと普通は思うけれど、当の監督黒澤明は「いかにも夏らしく見せるにはどうすればいいか知恵を絞る。そういった努力をあえてすることで、夏より夏らしい映像になった」といった主旨の発言を平然としていたものだ。確か。
あるがままを受け入れるだけでは「表現する」ことにはならない、なにをどう写せば夏に観えるのか…黒澤は冒頭のタイトルバック、野良犬が舌を出しあえぐように息をしているシーンで的確に夏らしさをフィルムに焼き付けることに成功している。まさに映画の教科書的な表現といえるだろう。

この「野良犬」の例に限らず、冬に夏の、あるいは夏に冬の撮影をすることはいくらでもあって、たとえば夏の設定なのに吐く息が白いと寒い時期の撮影だとバレてしまうので、現場では、本番前ギリギリまで役者には氷を口に含んでいてもらったりする。
寒いというのに氷を口にしなければならなかったり、寒風吹きすさぶ中を薄着で夏を装う撮影があったかと思うと、炎天下に厚着をするその暑さと戦いながらも如何にも寒さに凍えるような演技で冬の場面を撮影しなければならない。
季節違いのスタンバイをしなければならないスタッフの苦労もしのばれるが、役者もまた大変だ職業だ。

クリストファー・ノーラン監督が、季節感というものを明確にしてこなかった前2作「バットマン ビギンズ」と「ダークナイト」とは異なり、シリーズ最終作である「The Dark Knight Rises」ではどうやらきっちり冬の物語であることをこれまでの撮影シーンから伺い知ることができたわけだが、それにしても下の写真のように、こうまで一面の雪景色にこだわっているからには、冬ということ、雪ということにも、物語の裏テーマがあるような気すらしてくる。
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もちろん北半球に位置するピッツバーグはいま夏真っ盛りなので、気の遠くなるほどもある雪すべてがフェイク。

たとえば冬まで撮影日をズラし、実際にこれだけの雪が積もった日に撮影をしようとしても、足場の不安定さにより準備ははかどらないし、いざシュートとなっても、照明の熱で雪がどんどんと解けていって到底望むようなシーンなど撮影不可能となるだろう。
それにしても、大掛かりだ。
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この写真の、真ん中より下手側、レールの準備をしてかがんでいるスタッフを腕組みして見守っているクリストファー・ノーラン監督の隣り、同じように腕組みしてちょっとこちらを見ているのがジョセフ・ゴードン=レヴィット。
ここでは、ベイン軍団(おそらく"影の同盟")の戦闘車両らしいカモフラージュ塗装タンブラーのあとを追うように歩くジョセフのシーンが撮影されていた模様。

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そしてすっかり一体化してしまったかのようにバットポッドを乗りこなすセリーナ・カイル=キャットウーマンの勇姿。※もちろんスタントマンでしょう
これが夕陽だったりなんかしたら、実写版ルバン三世エンディングタイトルバックかよ!ってところ。バットマンよりむしろなびくロングヘアがさまになっていて、すでに"バットポッドはセリーナのもの"って感じになってます。

となると、気になるのがバットマンは、んじゃあなにに乗るんだ、ということ。
大破したはずの黒のタンブラーも現場に搬入されているし、セリーナ・カイルとバットポッドのランデヴーなんてこともあるのかもしれないけれど、ずいぶん前から新しいビークル導入の噂は絶えずあって、それを裏付けるようなスパイショットが今日ずいぶんとネットで氾濫したんたけれど、まだちょっと不確定な情報なのでここではアゲずに見送ります。

さて、ようやく日本語字幕つき特報公開です。
こちらでご覧いただけます。

by wtaiken | 2011-08-13 00:49 | 蝙蝠男の孤高の戦いは続くのか

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