夢の島再々生   

昭和高度成長の象徴というか、そのB面というか、殺伐としたゴミのうずたかく積まれた光景の、たとえば死んだ亨が入ったドラム缶を荷車に載せて引っ張る修の孤独を物語る「傷だらけの天使」最終回だったり、同時代オンエアの旧「ルパン三世」の最終回でも舞台となった、いうなれば祭の終わりどころとして最適な、まさに夢の果てる場所として実に象徴的であった夢の島が、なんだかいつの間にかキレイに整備されたうえ、いつつくられたかも知らない陸上競技場で、毎年といっても今年で2回目になる「WORLD HAPPINESS」という野外フェスが行われ、そもそも様々なアーチストが玉石混淆となって行われるフェスというものが嫌いな私が去年に引き続き皆勤なのは、坂本龍一、高橋幸宏、細野晴臣というこの3人からなるユニットが出演するからで、しかも今回はHASでもHASYMOでもなく、YMOという名前の実に16年ぶりの東京解禁とあっては、寄せる期待も尋常ではなかった。

8月9日、日曜。曇りときどき晴れ。

その他のフェスというものが一体どんなことになっているかは知らないが、この「WORLD HAPPINESS」ではメインのセンターステージとサブ扱いのレフトステージの2つが設置されてい、つまりセンターでアーチストの演奏中にレフトでは次のバンドのセッティングが行われ、余計な待ち時間なく流れるようにイベントが進行されるという誠に効率的このうえない演出が施されているわけなのだったが、このオーディエンスに隙を与えないイベント構成上、観客は自らの判断で、たとえば興味薄なアーチストの登場を見計らって、トイレに行ったり、軽食を買いに行ったり、タバコを吸いに行ったりしなければならず、そういう意味では出演者にとってはかなりシビアなイベントであるとも言える。

芝生の競技場内はいくつかのブロックに区分けされ、チケットで振り分けられたオーディエンスたちは気ままに陣取り、地ペタへペタンと座る視聴形態で、まあ盛り上がりたい人は随時勝手に立ち上がることになる。もちろんそんなことは誰からも説明されるわけではないが、レジャーシートが振る舞われるので「ああ常時スタンディングじゃなくっていいのだな」という暗黙の了解をそこから得る。今年のレジャーシートは100%オレンジデザインのかわいいやつで、これは別の機会にも使えると思った。

第一回目の前年私は最前の、しかもドセンターブロックだったので、なにか辺りには「オレたちの盛り上がりいかんでこのフェスの成否が決する」的な、「さあ、一致団結して拳を振り上げようじゃないか」的な空気が蔓延して、非常に窮屈な思いをしたので、今年は、ひとブロック後ろの、レフトステージ寄りのブロックで、のんびりとリラックスしながら見ることにした。
というか、ひとブロック下がっただけでこうも人は緊張感なく弛緩できるものかというくらい、周りの大人たちの中にはライヴがはじまっても我関せずとばかりに寝ている奴などもいて、ようするに大多数のオーディエンスにとって、大トリを務めるYMOのみが目当てなのだ。それにしてもあからさまだ。ただリラックスとはいえ、七輪持ち出してプチバーベキューパーティをはじめるなんていう退場覚悟の剛の者はさすがにいなかった。そのかわりビール飲みすぎて嘔吐するものはいた。気分悪いなら、帰れよお前。

だから一番盛り上がったには言うまでもなくYMOだったが、シビアに観察したところ、観客の離脱率が高いと感じたのは、ASA-CHANG&巡礼か、キリンジ兄のユニット、グラノーラ・ボーイズだったか。もろちん私は日本野鳥の会ではないので、正確なところは知る由もない。ちなみに私は高野寛でトイレとタバコ休憩に入りました。


てなわけで、興味のない人にはまったく興味のない、私の知人でも興味のある人は少数しか思い当たらない、登場アーチスト一組一組の感想&レポートに突入なのです、こっから先は。

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まずはレフトステージからスタート。以降センター、レフトのテレコで進行する。トップバッターは、「mi-gu」という、コーネリアスグループでドラム叩いてたあらきゆうこのソロプロジェクト。はじめて聴いたけど音の飛び交い方なんて、ちょっとコーネリアスっぽかったかなあ。ドラマーだからか、やっぱりグルーヴがしっかりしていてよかった。
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今年はスタートからほぼギュウギュウ詰め状態。これがHASYMOとYMOの吸引力の違いかってくらい。
そういえば去年スタート時には「これではじまっちゃうのぉ」というほど余裕があって、そんな中でのトップバッター(だったか二番目だったか)がいきなりスカパラだったからこっちは面喰らった。立つべきか立たざるべきか。ま、結局長丁場をおもんばかっての体育座りを決め込んだんだけど、周りを見れば同志が結構いた。ノリノリで颯爽と登場したスカパラしてみれば、夏によかれのスカミュージックが、よもやの観客大半体育座り状態で、だから面喰らったのはむしろバンドの方だったかも。とこれは、去年の話。
んで、今年は二番目の登場「pupa」で、いきなりのオールスタンディング状態に。
「ええーっ、なによ、もうなの」と私ら夫婦はブーたれながら渋々と、だって立たなきゃなんにも見えねーんだから仕方なく立ったよ立ちましたよええ。「座ってこーぜー、オー!」とかけ声のひとつもかけたくなったが。
さて、なんにも知らない人に説明すると、このpupaとは高橋幸宏と原田知世がメインの、っつったら他のメンバーには大変失礼なんだけど一般的にはそう言わせざるを得ないユニットで、唯一去年に引き続き連続参加したアーチスト。(HASYMOとYMOは別アーチストと考えて)
去年のpupaの演奏はどこかつっけんどんで、特に原田知世の緊張に強ばった表情があまりにも印象的だったが、今年は随分とリラックスしているようだった。笑顔もかいま見れたし。
年齢のことを言うのはどうかとも思うが、40を過ぎてもなお、会場内から「かわいいー!」とかけ声があちこちから上がるってんだから、原田知世もある意味ちょっとした怪物だ。その声援にまた照れてはにかんだりなんかしゃうんだからさー、いいよねー。
今やすっかり「かわいいー」からは遥か遠方へいってしまわれた薬師丸ひろ子とは実に対照的だ。そして渡辺典子はどこへ。
と、pupaについては、終始原田知世にしか目はいかず、流れる音楽もエレクトロニカでイージーなリスニング。私にとっては、もひとつフックとパンチが足りなくて、じゃあノックはあるのか!?という、きっとほとんどの人が理解不能な漫画トリオオチでpupa感想終了。
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コトリンゴ。
小鳥、りんご、というしりとりみたいなアーチスト名だ。当然続くのはゴリラだ。コトリンゴリラッキョウ。
教授お気に入りの人です。CMソングも手がけたりしているので、なんとなく聴いたことのある曲がチラホラ。近くのおやじが「なんだ、矢野顕子じゃねえか」だなんて、大声で吐き捨てていきなりの休憩に立っていきやがりました。そんなこと言わなくても。
「このあと(アーチストグッズ)ショップで売り子になりまぁーす。CD買ってくださーい」なんて言ってました。ちょっとしたゆるキャラですね、この人。
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LOVE PSYCHEDELICO。
名前くらいは知ってるよ。ミスチル、ドリカム…などなどバンド名はよく短縮されがちなものだが、ラブサイ? ラブデリコ? いっそラブコ? まいいやそんなこと。
女性オーディエンスからは圧倒的な支持を受けてました。私はもうコトリンゴん時から座ってますけど、なにか。
でも今どきの、いいグルーヴ出てましたよ、なんとなく聴いたことのある曲もあったし。なんて思ってたら、まさかのYMO「NICE AGE」カバー。まあ原曲もYMOにしてはかなりロックな曲だからね、ロックアレンジがはまって、かなりかっこ良い演奏でした。
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高野寛。
前述の通り、ここで休憩に入りました、と。懐かしい「ベステンダンク」を背中に感じつつ。
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Y.Sunahara。
Y.Sunaharaって。マリンでいいじゃん。黙々とテクノ演奏。生真面目テクノ、といった感じで、私にとっては抜きどころがまったくないというか。あえてバカっぽい、キャッチーなこともやれちゃう天才石野卓球とはこのへんに差があると思われる。
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ASA-CHANG&巡礼。
打ち込みの音に、パーカッション二人の超絶技巧が絡む。メンバーの一人であるプログラマーの浦山秀彦さんとはCMの仕事をしたことがあったので、以前CDで聴いたことがあったけど、この音楽はただ聴くよりライヴ向きだなぁと思った。
二人のパーカッション演奏が巨大モニターに終始映されていて、音楽的には、ジャンル語彙の少ない私にはただリズム主体のアヴァンギャルドな、としか形容しようのない混沌としたもので、前述の通り欠席率は高かったようだけど、私はかなり引き込まれました。いやー、面白かったなあ。
ちなみにセンターにドーンとある巨大モニターには、用意した映像が流れることもあるし、アーチストの演奏が中継されることもあり、使い道はアーチストそれぞれ。
ちなみに、Y.Sunaharaは一切演奏中継は入れてなかったので、その辺も観客が盛り上がれないポイントでもあるわけです。やっぱアーチストが、ボーンとでっかいモニターに出ると、オーっっとなるもんだからね。
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スチャダラパー。
ほぼオールスタンディングになりました。それでもまだ寝つづけるものどもも散見しましたが。YMO以外にはホント興味のない人なのね、あなたたちって。もちろん私はノリノリでしたよ。
キラーチューン「今夜はブギーバック」やってくれました。小沢健二は来なかったけど。
キラーチューン「Hey!Hey!Alright」やってくれました。木村カエラも来なかったけど。
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THE DUB FLOWER。
いとうせいこうとDUB MASTER Xにかせきさいだぁ三がメイン。これ”かせきさいだぁさん”じゃないっすよ。表記上三本線が入ってるだけで。
いとうせいこうのラッパー姿は、シティボーイズライヴでの役者紹介でしか見たことなかったが、いまやすっかりテレビでのお笑い芸人をうまく転がす名司会者っぷりが本業と思われがちな、だからというわけではないんだろうけどいまひとつアーチストへのなりきりが中途半端で、ノリ、動きがちょっと滑稽でした。
それに引きかえ、かせきさいだぁ三は、いいね。あの平々凡々たる風貌が俄然かっこ良く見えるんだから。そのかせきが朗々と唄いあげる井上陽水の名曲「傘がない」ダブ・レゲエバージョンは、もうサイコーだったけど、会場全体としてはいまいちな雰囲気が。もっと盛り上がってもいいのに、と思いました。
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Chara。
一昨日の芸能ニュースで「離婚後初ライヴ」なんて書かれてました。
「やさしい気持ち」とかやってましたよ、確か。
スチャダラ、かせきで思いのほか盛り上がってしまったので、ここは体力温存のため座ってみて、じゃあついでに目もなんならつぶっちゃおっかなーなんてやってたら、つまり完全に寝てしまった私。だからほとんど憶えてないのだ。
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もうすぐ大トリなので、そりゃもうぞろぞろと民族移動のように離脱率の高かったグラノーラ・ボーイズ。
曲名忘れちゃったけど、いい感じのカバーばかりやってました。オリジナルも一曲やっていたよう。この曖昧さは察しの通り、Charaの流れでまだぼんやりとしてたからなんだけど、最後の曲で飛び起きました。
なんと、まさかの、まじですかいの、黒澤明「どですかでん」カバー。やるか、そんな曲、普通。しかも野外フェスでよ。以上褒め言葉。個人的には黒澤音楽の中でもかなり好きな曲であるから、拍手喝采。
よくぞ。でかした。なによりそれを演ろうっていう選曲センスとその心意気を買いたい。でも離脱せず居残っていたほとんどの観客は、ポッカーンという感じでしたけどね。
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ムーンライダーズ。でたね、ついに。
あのー、ですね、私、かれこれ四半世紀以上、ファンだったわけです。このブログでもすでにカミングアウトしてるけど。んでまあ、この日のライヴを観ながらつらつらと、なんで彼らのことが好きになったのか、なんてぇことを、つい思い返してしまったのです。
その楽曲を、テープならすり切れるほど、レコード・CDなら溝がみるみる深く削られてしまうほど、それほどまでにどうしてムンライダーズを聴いていたのか、ひとつ明確なのは、彼らの音楽が文科系のロックだったから、ということ。詩はシュールな文学のようだったし、なにしろロン毛で髪を振り乱し革ジャン着て汗をかいてこそのロック魂とするような体育会系(←18歳当時の、私のロックのイメージです、これは)とはまさに対極に位置する、いまでいう草食男子の御用達みたいな、体温低めの音楽だったことがなにより魅力的だったんだっけなぁ、とそんなこんなが懐かしく思われました。
それが90年以降、5年間ものブランク後活動再開されるライダーズの、特にライヴアクトにおいては、対極だったはずの体育会系に転ぶ比率が異様に高くなり、内省的に黙々と演奏し続ける文科系ライヴは影を潜めてしまい、そのあたりが私のファン心をすっかり引き潮に変えてしまった大きな理由だったわけなんだけど、で、この日のパフォーマンスはというと、やっぱり!バリバリの!体育会系!ロックでしたよ、どわははははは。さ、帰るか。

悲しいかな、演奏は相変わらず勢いだけの、ただただ全員の楽器の音が前面に出てうるさくって繊細さに欠けるものだし、そこにはグルーヴ感のかけらもなく、なんだか無理矢理若さをアピールしている姿に、もういたたまれない感じがしてしまった。
まだ現役バリバリでやってます僕たち感は、彼らを知らない若い人にとってはもはやワイルドワンズと同じベクトルのバンドにしか見えないんじゃなかろうかとさえ思った。
周りの多くの人たちも、登場こそ「ニッポン最古のロックバンド」みたいなことでスタンディングで迎えたものの、「ああ、なんか昔の古い曲やってんのね」ってな感じで、一人座り二人座りし、3曲目を演奏している頃には辺り一面すっかり消沈して思い思いに雑談なんてはじめる始末。
しかも選曲のミスが多いと思った。例えば「冷たいビールがないなんて」はCMタイアップの企画モノの曲で、ファンにとってはライダーズがあえてサーフロックをやる面白みを感じえるし、「冷めたビールがないなんて、誰か5分で買ってこいよ」という悪のりにも思える詩は、「寒いよ ぼくと 滑車…抱き合う ぼくと 振子」などというロートレアモン顔負けの詩をかつて唄っていたというバンド歴を踏まえての、たまにはこんな昭和歌謡テイストなパロディー曲もありだよねと理解もできようが、なんの情報のないままこの日はじめて聴く一見さんには、なんだこの古くさい懐メロは?ベンチャーズカバー?くらいにしか思えなかったろう。

そろそろ「若いもんには負けねえ」気概見え見えでハッスル(これまた古い言葉だが、彼らの姿にはこの表現がぴったりだ)するライヴはやめにして、年相応の、落ち着きのある、大人な演奏を望みたいところだが、どうも万年青年ぶりをいつまでたっても公言して憚らない彼らのことだから、ここまでくると(結成32年)無理なんだろうな、とあきらめの境地。まあこのノリが好きなファンを大事にしていけばいいんじゃないんじゃないんですかぁ。なげやり。
って、もうとにかくいまの、そしてこの日のライダーズについての愚痴不満を書き出したら、ブログ10日間ぶっ通せるくらいの勢いなので、このへんにしておこうと思う。
いや、最後にもひとつぼやこう。この、タイトルすら自分のブログに記すことが憚れる「ヤッホーヤッホーナンマイダ」って曲の演奏中に鈴木慶一がこう観客をあおるのだ。
「”ヤッホー”、へい、カモン!」…。
へい、カモンて言われましても...。そのリピートアフターミーには応えられないよなー。「やっほー」...て。高尾山頂にのぼって爽快極まりない気分になったって言わないよ、私は。

なんだかこんな感想ばかりだと、悪い気がしてきちゃった。
だからこれで最後の、ひとつだけよかったところ。
グラノーラ・ボーイズが終わったと思ったら、間髪入れずに演奏がはじまったのでセンターステージに目を移すと、もう演奏してるんだよ、ムーンライダーズが。
通常ならほんの少しの空白があって、次登場アーチストのアナウンスが入ってから出番のはずが、なに勇み足でおっぱじめてるのかと思ったら、「♪〜チェック。1。2。マイクチェック」という、なんかコーネリアスの曲みたいな、つまり音チェックのためのインプロビゼーションを演っているのだった。
これがよかった。これにはかなりライヴへの期待感が増大させられました。が...、
※このムーンライダーズ感想の振り出しに戻る。
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すっかり熱くなりすぎて、どれだけ長く続くんだ、今日のブログは?って感じですが、あともうちょい。トリまで来ました、相対性理論。
やったね。かなり話題のバンドです、一部では。んで、私も今年かなりハマりってます。
巨大モニターに映し出される映像は、おそらくアーチストの意向により一切アップなし。ゆえにボーカルやくしまるえつこの顔、いまだわからず。
このタイトルはブログに書いても一向に憚らない「LOVEずっきゅん」から「地獄先生」「テレ東」「品川ナンバー」あたりのてっぱん選曲。
熱狂的男子愛好者中心にが盛り上がっていました。私ももちろんそのひとり。
やくしまるえつこ、「ちゃお!」つって帰ってったよ。不思議ちゃんなんでしょうか。まだまだ謎の多いバンドだ。
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大トリ、YMO。
東京では16年ぶり。ただ京都でのライヴに2007年YMO名義で出演しているので、芸能ニュースなどで伝えられる「YMOとしての日本でのライブは93年の”再生”以来」というのは誤報。
本活動から再生プロジェクト以降、つまりずーっと緊張関係にあったと言われている細野晴臣と坂本龍一が如何にしてこうまで友好関係を築くに至ったかは「プロジェクトX」に譲るとして、SKETCH SHOWからはじまるこの3人のリプロダクトは、例のCM曲「RYDEEN79/07」でも明らかなようにエレクトロニカアプローチであり、卓を前にマウスを棒立ちでクリックしている3人をただただ観ているオーディエスというライヴ光景がこれまでのメインだったわけだけど、ついに、というか、念願の、というか、幸宏がド頭からドラムセットにつくと、細野は生ベースをやおらかつぎ、教授はキーボードにスタンバイするという、もうこの状態となれば、会場内一斉地鳴りのように沸き立つのも当然のことだろう。
YMOを生楽器で、というのは、93年の再生時からの宿題だったからね。私はもうこのスタンバイ状態だけで鳥肌ものでした。
しかも一曲目、「♪〜You say yes, I say no」と幸宏が歌いはじめて、なんとまさかのビートルズ「HELLO GOODBYE」カバー。いきなり号泣。好きだったんだよなー、中高生の頃、この曲は特に。
ビートルズカバーというと、本活動中に換骨奪胎の「DAY TRIPPER」があったけど、これは正統ロックバージョン。不意をついた、憎いまでの選曲。私としてはこの一曲を聴けただけで十分、この日のチケット代分の価値はありました。
あとは新旧織り交ぜて怒濤の演奏。そりゃもう幸宏がドラム叩いて、細野さんがベースを弾けば、すなわちニッポン最強のリズム隊となるわけだから、火の打ち処のないグルーヴ感に今度は慟哭。ぬおーっ。
懐かしいところでは、ライヴでやるのはもう30年弱ぶりになるだろう「千のナイフ」。その他「Tibetan Dance」「riot in lagos」「RYDEEN 79/07」…などなど。そして最後をしめくくるアンコールが、40男をそんなに泣かせてもうどうするつもりなの、っていう「Firecracker」! しかも細野さんが木琴叩いてって、それは中華街ライヴの再現かっていう…。ファン以外の人には、さっぱりなに言ってるのかわからない話だろうけど。
最後の最後は「Firecracker」お約束の、ステージ両サイドから花火がドッカーンと打ち上がって終わり。

ひとつ付け加えると、ギタリストとして参加した小山田圭吾が、3人とのビジュアルのマッチングもバッチリで、最高にかっこ良かった。

○○○
総入場者数は1万4千人、と報道されている。確かにものすごい人出だった。行きも帰りも新木場駅から会場間は長蛇の列。
たまに晴れ間も覗いて、気温は高かったけどおおむね曇天。太陽が出ないんならと油断したおかけで、暑くて脱いだ帽子から露出されたおでこがピリピリするほど焼けた。夏フェス焼け。

再生YMOは、いうなれば「すべてを終わらせるための再生」だったと思う。
「あのさ、一回ね。もうホント一回ぽっきり。仕方ないから再生するけど、もうその次は絶対なしよ」とファンに言い聞かせるためだけの。
だからもう断じて次はないと思ってた。3人が揃うことなど、これから先は。

巨大なプロジェクトとしてではなく、メンバー本人たちから自然とわき起こる感じで、「やりたくなったら、いつでもまたやろうよ」という今の3人の関係性は、YMOとしてまったく新しい地平に立っている気がする。別に新譜など出なくっていいや。こうして年に一度なのか、何年に一度なのか、3人が揃い、そこに立ち会えれば。
相変わらずマスコミも、そしてファンも、その中の一人である私も、やっぱりついつい「祭りだ祭りだ」と騒ぎたくなるけど、このままの状態が長く続くことを願う。
いやー、夢の島でいい夢みましたよ、ホント。

by wtaiken | 2009-08-12 04:20

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