もし昨年の公開時に「ダークナイト」IMAX版が上映されていたなら日本のどこへだって行くつもりの私だったけど、それは叶わなかった。
IMAXシアターが人里を遠く離れた未踏の地にあったからでも、どこへだっていくつもりの旅費がいっかな工面できなかったからでもない。
昨年、日本にはIMAXデジタルシアターがなかったからである。ないものには行けないよお。
正確に言えば、これまでにいくつかのIMAXシアターはあるにはあった。が、IMAXにかけるべき映像コンテンツが不足して、結果経営に行き詰まって閉館という目に(多くの施設は)あっていたのだった。
開館してみたけんだけど上映する作品があんまねーなぁー、じゃあやめますか、ってのも随分と間の抜けた話だが、東京だと新宿高島屋が2001年に、品川プリンスホテルが2007年に撤退している。
2007年! あと一年頑張ればいいものを。
ここで知らない人にもよくわかる「IMAXってなに?」講座。
通常劇映画は、フィルムの幅が35㎜のものを使う。(ミリを省いて、業界的には「さんごー」と言ってます。)
フィルムにはほかに8㎜、16㎜なんてのもある。
このフィルムの大きさの差がなんなのかというと、情報量の差。デジタルでいうなら画素数。「それが味」という一面はあるものの、さすがに劇中の狙いでなければ巨大スクリーンに8㎜映像をかけたら、画が荒くて寝ぼけて、とても見られたものじゃない。
で、IMAX。これが35フィルムの、なんと4倍の大きさ。「にばい、にばい」by高見山どころか、唐突に4倍ですぜ、ダンナ。というわけで、つまりえらくキレイな映像であるだろうことがこれでおわかりいただけると思う。そしてそれは専用のスクリーン映されるから、迫力もまた倍増されるわけだ。
映像が美しく迫力満点のIMAXに、 だったら何故劇映画はすべからくそれにならないのか。
その理由は簡単で、ざっくりいうと、撮影時に予算がかかりすぎることとインフラの問題。
なんたって4倍のフィルムを扱うカメラは馬鹿にでかくて撮影規模がふくらむうえに機動力はないしで、大変このうえない。
「そりゃいいのはわかるけどさー、いいんじゃね、35で」と、映画製作者たちが二の足を踏めばかける映画も一向増えず、そうなりゃ施設の拡充もままならない。つまりソフトとインフラ双方の足並みが揃わなければ、結局2008年までのニッポンの現状となるわけなのです。
ところが、ここにきてにわかにIMAXシアターに注目が集まってきた。
ハリウッドが「ハリウッドでつくられる映画は近い将来3D映画が主流となる」と断言したからで、
まあハリウッドさんと言う人が断言したわけではないから妙な文章になってしまったが、どうもそれは本当のことらしい。
しかし「3D映画」と聞くと、私たち世代にはあまり良い印象はない。それは子供の頃に"飛び出す!"というふれこみの怪獣映画を赤と緑のメガネをかけて観た記憶があり、当時「なんだ、たいして飛び出して来ないじゃないか」とひどくガッカリしてしまったからで、どうもそれは誰しもが思ったらしく、その後途絶えてまったく流行らなかった、つまり廃れてしまった過去の手法という認識があるからだ。その3Dがだ、いまさら主流?と言われてもなあ。
この「?」をひとまずおいて話を進めると、スクリーンから飛び出したり、目の前から飛び込んでいったりする3Dの臨場感をより楽しむには、迫力の大スクリーンがもっとも適しているだろう。流行るんだったら、じゃあインフラを整えましょうと、そうしてようやく立ち上がったのが109シネマズ。
今年6月に大阪の蓑面と埼玉の菖蒲に川崎という、なんだか微妙な立地に3館オープンしたわけで、そのキックオフ記念試写でようやく「ダークナイト」がなぜか菖蒲でのみ一回だけ行われ、「日本のどこへだっていくつもり」だった私は千載一遇のチャンスどばかりその試写会券をネットオークションでゲットし、いそいそと埼玉の畑のど真ん中にポツンと巨大ショッピングモールに併設されたIMAXシアターへ延々2時間かけ行ってきたことを、私はてっきりこのブログに記しているかと思ってたけど、書いてなかったんだね。
観てきたんだよ、「ダークナイト」IMAX 版を。
そこで上映前に数分間のエキジビジョン3D映像を観たんけど、これが思わず「どへー!」って後ろに反り返るくらい、まあいろんなものが飛び出してくるから驚いた。アニメのなんとかエキスプレスってタイトルの映画で機関車がギュイーンて目の前ギリギリで止まったりしたけど、そんな創りものよりむしろ自然を映したドキュメンタリーの方が凄かった。だってよー、そこによー、ホント目の前に魚が泳いでるんだぜー。わかっていてもついつい手が出ちゃうの。触れるんじゃないかと思ってよ。
ちなみにかけるメガネは改良されて、目がチカチカするような赤と緑のレンズではなく、特殊な黒いレンズのサングラス。ちょっと重いんだけどね。
どうやら来年あたりは3D映画元年となる気配で、先陣をきってジェームズ・キャメロン監督12年ぶりの全編3Dの新作「アバター」は12月に公開。その後も続々。まだアニメが多いんだろうけど、それら新作もさることながら、過去作品の3D化も進むようで、プロジェクトとしては「スターウォーズ」旧3部作だったり「タイタニック」だったり、いろいろあるみたい。
と、今日は話がとり散らかってますが、ここからがようやく本題。
おそらくもう二度と行くこともない菖蒲へオークション購入してまでわざわざ出向くなどという手間ひまかけなくても待てば海路の日和ありで、熱烈ファンのリクエストにより「ダークナイト」IMAX版が3館揃って公開決定!なのだ!
東京にはまだないけど、埼玉行くより川崎は断然近いし、駅からすぐだし、もしDVDでしか観てなくて「ああ、映画館で観るべきだった」とちょっと後悔している人は、もうこの機会に万障お繰り合わせの上ご覧いただきたいものだ。興味のある人は、
こちらへ。なんでまたIMAXにこだわったのか、褒め言葉として「映画バカ」としか言いようのないクリストファー・ノーラン監督の「映画は劇場で観なさい」パワーが、そこかしこから感じられる作品なので、ホント映画館で観ることをオススメします。
IMAXを使ったのは6シーンのみ。35のところと若干画角が違って劇中スクリーンの縦幅が延びたり縮んだりしてるんだけど、そんなのは気になりませんので安心を。
IMAXシーンの中で特筆すべきは、ハービー・デントの護送中、マジックアワーから群青色に染まりつつある空と燃え盛る消防車のほむら、この対比が最高に美しい。IMAXならでは。
それからIMAX版経験者のアドバイスをひとつ。席は、字幕を無視してなるべく前列の方がいいんじゃないかな。と。私は一番後ろで観たけど、臨場感をより得るには前の席にすべきだったと後悔したので。
大の黒澤映画ファンだった熊井啓監督は、「七人の侍」(か「生きる」だったか)の冒頭からのカット割りを延々事細かに諳んじたそうで、「好きな映画にはこれくらいの思い入れがなけりゃダメだ」と奥田瑛二に言ったそうだ。
「ダークナイト」は、劇場でもDVDでも相当数立て続けに観たけど、冒頭から流暢にカット割りを諳んじるのは...そりゃ無理な相談だ。まだまだだな。
すっかり「もうしばらくいいや」感がいっぱいだったけど、かなり前列の方で映像だけ注視するもう一回もありかな、と思い出した次第。
よおし、また行くぞ、と。